幼いわが子を寝かしつけるのに、ベッドガードを使う人は少なくない。ベッドガードとマットレスのすき間に幼児がはさまり、窒息死する事故が相次いでいるため、消費者庁は2017年9月22日、「できるだけベビーベッドに寝かせて」と注意を呼びかけた。
ベッドガードについては、日本小児科学会でも「危険なので18か月(1歳半)未満の幼児は絶対に使わないように!」と警告している。
柵とマットレスの間に顔が挟まる
消費者庁の発表資料によると、東京都内で同年9月12日、大人用ベッドで寝ていた6か月の男児がベッドガードとマットレスの間に挟まり、死亡した状態で発見された。事故の報告が同庁にあったのは9月20日で、詳しい状況は不明だ。東京都内では8月8日にも、同じ状況で1歳未満の男児が病院に搬送後、亡くなる事故があったばかりだ。
2016年9月7日にも東京都内で、生後6か月の男児が同様の状況で窒息状態になり、一命を取りとめた事故があった。日本小児科学会では、警鐘を鳴らすためにこの事故の詳細な情報を2017年5月、ホームページ上の「傷害速報」に載せている。それによると、事故は次のように起こった。
生後6か月の男児が自宅寝室のベッドの中で、窒息死寸前の状態で発見された。男児宅では、大人用ベッドに市販のベッドガードをつけ、男児を寝かせていた。ベッドガードは、L字型の一辺をマットレスの下に差し込むタイプ。中央のメッシュ部は伸縮性があり、製品をマットレスに密着させても簡単にすき間ができる。事故が起こる前にも男児の腕が度々すき間にはまり込んでいたため、母親はタオルケットを丸めてメッシュ部に詰め込む工夫を行っていた。
母親が2分間目を離したすきに顔は青紫色に
母親は男児と一緒に買い物から帰宅し、まず男児をベッドに寝かせた後、車内の荷物を取りに戻った。男児は起きていて、母親の姿が見えなくなって泣き始める声が聞こえた。約2分後に母親が戻ると、ベッドガードが水平にずれ、マットレスとの間に10センチ弱のすき間ができ、すき間にうつぶせ状態の男児がはまり込んでいた(写真参照)。
あわてて母親が抱き上げると、男児はグッタリと目を閉じ、顔は青紫色になっていた。母親は男児を激しく揺さぶった。男児は呼吸を始めたが、反応が鈍かった。救急車で病院に到着した時には意識ははっきりしていた。母親の発見が早かったのが幸いした。
同学会では、事故が起きたのと同じタイプのベッドガードを調査した。それによると、米国では2000~2010年の11年間で、ベッドガードによる幼児の事故が132件報告され、うち13件が死亡事故だ。そのうち3件は男児宅と同じく大人用ベッドにベッドガードを付け、幼児を寝かせていた。やはり何らかの原因でベッドガードが水平方向にずれ、すき間ができて幼児が落ち込んだ。
このため、米国の製品安全員会では、ベッドガードの使用を生後18か月(1歳半)から60か月(5歳)までと定めている。日本の業界団体の安全基準も米国にならっている。実際、男児がはさみこまれたベッドガードにも「生後18か月未満のお子様には絶対使用しないでください」という警告が貼り付けられていた。このことから同学会は「傷害速報」の中でこう警告している。
「保護者は製品の注意喚起に気づいていなかった。窒息事故を防ぐには、業界がもっと効果的な注意喚起の方法を検討したり、幼児も使用できると誤解を生むような宣伝方法を改めたり、18か月未満の子でも使える製品の開発が課題になる」
ともあれ、幼児にはベッドガードは命取りになることを知っておくべきだろう。