「......モリカケ!」――生放送のマイクに、小さいながらも確かにそう聞こえる音声が乗った。星浩キャスターは少し慌てたように、外して肩に垂らしていたイヤホンを付け直す。安倍晋三首相は一向構わない様子で、持論を展開し続ける。
2017年9月25日、衆院解散を発表した夜、安倍首相は「ニュースウォッチ9」(NHK)、「報道ステーション」(テレビ朝日系)、「NEWS23」(TBS系)に立て続けに出演した。上記の一場面は、その最後「NEWS23」でのものだ。
報ステは比較的「平和」だったが
今回の解散総選挙を「国難突破解散」と位置付ける安倍首相だが、野党などからは批判が続いている。特に、28日召集の臨時国会冒頭での解散には、森友学園問題・加計学園問題(いわゆる「もりかけ」)をめぐる追及からの「逃げ」ではないか、という声が根強い。
25日夜出演の番組でも、やはりこれらの問題、そして小池百合子都知事が立ち上げた「希望の党」への対応が焦点となり、キャスターからの質問が集中した。ニュースウォッチ9・報道ステーションは比較的スムーズにやり取りが進み、小池新党についての話題では首相が笑みすら浮かべるなど余裕含みだったのに対し、NEWS23は、熱弁をふるおうとする首相と、星浩氏らキャスター陣が「かち合う」展開となった。
たとえば序盤、「冒頭解散」の是非を問われた首相が1分近くかけて反論、さらに「今回はですね、まさに消費税の使い道において2兆円、これは毎年毎年......」と消費税問題に話を広げようとしたところ、「ちょっとお待ちください、のちほどお伺いいたします」と雨宮塔子キャスターがこれを制して、「個人的に気になっているのは......」と、野党が「弱ってる」タイミングを狙っての解散ではないか、と話題を転換する。首相はしかし、「先ほども申しましたように、野党というのは選挙がなければ政権は取れないわけでありますから......」と、さえぎられる直前の話題を繰り返した上で、再び消費税の話を始めようとする。