希望の党。小池百合子都知事が2017年9月25日、立ち上げを発表した新党の名前だ。ところが、これと同じ名の政党が、12年前に総務省などが製作した短編映画に登場するとして、話題を呼んでいる。
その内容はしかも、啓発作品としては異例のディストピア的なものだ。果たして、その内容は――?
監督は「ガメラ」「デスノート」の金子修介氏
問題の映画「希望の党☆」は2005年、オムニバス映画「It's your CHOICE!」の一編としてウェブサイトなどで公開された。約20分の短編で、メガホンを取ったのは平成「ガメラ」3部作(1995年・96年・99年)、「デスノート」(2006年)などで知られる金子修介さん、脚本を松枝佳紀さんが務める。総務省・明るい選挙推進協会が「若者の選挙離れ」への啓発キャンペーンの一貫として製作したものだ。
映画は序盤、木下ほうかさん演じる父親、渋谷飛鳥さん演じる高校生の娘らによるコミカルな掛け合いで展開される。父親は、「誰が政治家になっても変わらなくない?」「たかが選挙で......」とのたまう政治に無関心な大人で、選挙にもほとんど興味を見せない。真面目な娘からは、選挙にちゃんと行くように繰り返し促されるが、結局妻とのデートを優先して、投票をサボってしまう。ここまでは、よくある「啓発映画」的なムードだ。
ところがその選挙で、「希望の党」なる新興政党が過半数を制し、政権を奪取してしまう。数カ月後、「国民権利義務省」から父親に届いたのは、「国民選挙義務新法に基づき、その選挙権を剥奪する」という封書だった。実は、件の選挙で「希望の党」は、3回続けて投票しなかった国民からは、選挙権を剥奪するという政策を掲げていたのだ。逆に、「希望の党」支持者となっていた娘をはじめ、政治に関心の高い未成年には特別に選挙権が与えられる。
呆然とする父親に、娘は立て続けに言い放つ。
「権利って当たり前にあるものじゃなくて、勝ち取って、それを維持していく努力を忘れちゃダメなんだよ」
「どういう人が選挙権を持った方がいいと思う?お父さんのように大人だけど、政治のことにまるっきり関心も責任も感じていない人?それとも、あたしのように未成年だけど、政治にも関心があって勉強もして、日本の国をちゃんとしたいなって思ってる女の子?」
過激な政策が次々と実現され...
選挙権を得た子どもたちの支持も背景に、「希望の党」は次々と改革を実行する。ペットを処分した女性は「生類憐みの法」で逮捕され、痴漢した男性は死刑になる。ようやく国が間違った方向に進んでいることに気付く父親だが、選挙権を持たないことから反対の声を上げる機会もない。ついには戦争が勃発し、娘までもが出征することに――ここから、物語にはさらなるどんでん返しがあり、皮肉な結末を迎えることになる。
明るい選挙推進協会ウェブサイトでの公開はすでに終了しているが、金子監督名義でYouTubeに再公開されており、全編を鑑賞することができる。小池新党の名前として「希望の党」が挙がるとともに一部で注目を集め始め、25日にはウェブメディア「BUZZAP!」などが取り上げた。金子監督自身も、映画に言及するユーザーの発言を複数リツイートしているほか、脚本の松枝さんも、「希望の党」という名前は自分が考えた、と当時の裏話をツイッターで明かしている。
なお、劇中の「希望の党」ウェブサイトは緑を基調にしたデザインだ。これまた偶然の一致ではあるが、現実の小池氏も緑をイメージカラーにしている。