痴漢は「病気」、療法を紹介
 幼少期の過酷な経験が一因に

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「マネキン相手に痴漢」で治癒へ

   痴漢してしまう反射を制御できる状態に戻すのが、平井氏が開発した「条件反射制御法」だ。

   3か月に渡る治療で、「第一ステージ」は「おまじない」を行う。

   「私は今、痴漢、下着泥棒、露出はやれない。大丈夫」

   1度唱えたら20分空けて再び唱える。これを1日に20回繰り返す。「おまじない」という刺激を与え、その後は痴漢が起こらないという新しい条件反射を体に叩き込む。

   「第二ステージ」はおまじないを1日5回に加え、「疑似」を行う。

   女性を模したマネキンを相手に、実際の痴漢行為と同様に、後ろから近付いて胸を触って逃げる。その後、「唾液がたくさん出た」「楽しくなった」「高ぶった」など、マネキンに痴漢した時の状態を正直に答える。

   次に、マネキンの体を触る直前で、平井氏が「寸止め」させる。また、「残念に思った」「最後までしたかった」など、その時の気持ちを答える。これを1日20回だ。

   入院から1か月、「疑似」が160回目に近付いた頃、森田さんはマネキンを触っても全く興奮しなくなっていた。

   疑似の目的は、痴漢をしてしまう「動物的な脳」に空振りさせることだ。

   触っても、マネキンだから固いので、痴漢は「空振り」「失敗」している。人間は失敗する行動をいつまでも続ける特性がないので、痴漢の衝動が徐々におさまっていく。

   森田さん「初めは楽しいとか、ドキドキ感が多々ありましたけど、今はもう、治療でやらなきゃいけないからやってるような感じになってますね」

   今外に出て、女性が一人で歩いていて、周りに誰もいない...という状況になっても、「多分大丈夫じゃないかな」と言えるほどに回復していた。

   入院から1か月半で、森田さんは「第三ステージ」の「想像」に入った。

   痴漢をした過去の1日を、朝起きてから痴漢するまで何をしていたか書き起こし、目をつぶりながら平井氏と対話してより詳細に思い出していく。

   目覚めて目にしたもの、行った場所、そして女性を見つけ、狙いを付けて追いかけ―というところまでは事実の通りに話し、さあこれから痴漢するというところで平井氏が「女性がマネキンになった」と対象をすり替える。「疑似」同様、「空振り」が目的だ。

   こうした入院治療で、多くの患者は欲求を抑えるのに成功し、退院していく。しかしその後も、「おまじない」や「疑似」は継続する必要がある。痴漢撲滅には、加害者の根気強い治療も重要なのだ。

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