「#全くインスタ映えしない風景写真選手権」――そんなハッシュタグが2017年9月24日、ツイッターで突然のブームを巻き起こした。
何気ない路傍の風景から、変てこなオブジェ、とぼけた面白写真まで......。確かに「インスタ映え」しなさそうな写真たちの、しかし何とも言えない魅力とは。
路上のコバルトブルー、尻から出る水道水
キラキラしたカラフルなアイテム、女子受けしそうなオシャレなスポット、おいしそうな料理、フィルターで強調された鮮やかな色彩の空と海――「インスタ映え」という言葉から思い浮かぶのは、そんな画だろう。
ハッシュタグ「#全くインスタ映えしない風景写真選手権」に集まっているのは、その真逆だ。
たとえば、「ぽんてり」さんが9月23日に投稿したのは、アスファルトとコンクリートで覆われた、どこにでもあるような路面の風景である。そこに、誰かがこぼしたのだろうか、コバルトブルーの塗料らしきものが飛び散っている。色彩自体はインスタ映えしそうなのだが、なんだか違う。後述の「鈴木以外数人」さんに言わせると、「『コバルトブルーなのに映えない』みたいな残念さ」。だが、どこか味がある。
「くまの稚雪」さんが、沖縄市内の公園で撮影したというのは、動物のキャラクターをモチーフにした水飲み場だ。かわいく見えなくもないが、なぜか手洗い用の蛇口が尻についていて、そこから水を噴出する仕組みになっている。ちょっと虚ろに見える表情もあって、こちらもインスタグラムでは「いいね」がもらえなさそうだ。
他にも、「俺が危い」と赤文字で対処された交通安全看板、みかんの皮と実で作った「芋虫」、「ジョブズ」「マイケルジャクソン」とカタカナで書かれたサイン色紙――などなど、多数の投稿が。最初のツイートがあった20日以降、25日までに約3万件近くのハッシュタグへの言及があり(Yahoo!リアルタイム検索のデータより)、特に24日の夜から一気に話題が加速、ツイッターの「トレンド」に25日朝まで載り続けた。当初は「ぽんてり」さんのような、「地味さ」の中に面白味がある写真が多かったが、人気が広がるとともに大喜利的な「笑える」写真が増えるなどの変化も見られる。
ビビる大木や企業アカウントも参戦
ハッシュタグを生み出したのは、ツイッターユーザーの「鈴木以外数人」さんだ。20日、自ら撮影した写真に付けたこのタグがじわじわ広がり、上記のようなブームを呼ぶにいたった。
「スマホのフォルダの中に『インスタ映えする写真』の対極みたいな地味な写真があり、インスタ映えの反対方向を突き詰めていったらおもしろいんじゃないかと思ったのがきっかけでした」
J-CASTニュースの取材に対して25日、「鈴木以外数人」さんはダイレクトメッセージ(DM)で投稿のきっかけをこう振り返る。ハッシュタグの広がりについては、
「意を汲んでくれた人が地味・非おしゃれ・意図の不明さみたいないろんなアプローチで反インスタ映えを突き詰めてくれてうれしかったです」
としつつ、話題になるとともに「おもしろ写真」路線に流れがシフトしてしまったことは「ちょっと残念」だとか。なお、「僕はインスタグラムはしていないのですが、インスタグラムに恨みや怨念があるとかそういうことはないです」。
2016年ごろから注目を集め始めた「インスタ映え」は、今や若者の流行の枠に留まらず、企業のマーケティングや商品開発にも活用されている。ユーキャン新語・流行語大賞の前哨戦というべき「2017年上半期注目語」にも筆頭でランクインするなど、流行語大賞レースの「本命」との呼び声も高い。
そんな「インスタ映え」のアンチテーゼともいうべき、今回のハッシュタグ人気。25日未明には、お笑いタレントのビビる大木さんが、サンリオの「リトルツインスターズ(キキララ)」などに扮装した写真を投稿したり、中華ファミリーレストラン「バーミヤン」公式アカウントが、ラーメン用のどんぶりを温めている様子をツイートしたりと、著名人や企業アカウントなどが次々と「参戦」、拡散は続いている。