アップル社最高齢のプログラマーは60歳までパソコン音痴
「90歳であの動きはスゴイ」と感心した飯島教授がもう1つ注目したのが萩原さんの「身だしなみ」だ。萩原さんの爪にはキレイなマニキュアが。
飯島教授「外へ出かける時に少しでもキレイでいたいという気持ちは、フレイル予防に大きく役立っています。これまでは身体的な衰えを『虚弱』と言ってきましたが、それだけではなく、心の部分や社会生活の衰えも『虚弱』から外せないことが最新研究でわかってきたのです」
萩原さんは卓球教室などで人前に出ることが多く、身だしなみに手は抜かない。時間を作っては美容室で、髪や爪の手入れをしてもらい、お気に入りのミセスブランドで買い物を楽しむ。積極的に外に出て、好きなことを楽しみながら続けることが大事なのだ。
中村さんと萩原さんの2人は、比較的楽に第2の人生の目標を見つけやすい環境にあったといえる。3人目のスーパーシニア、若宮正子さん(82歳)は母親の介護で外出すらままならない事情を抱えながら人生の目標に出会った。
番組ではアップル社の新商品説明会の映像が映し出された。ティム・クックCEOが「マサコ・ワカミヤは82歳! 彼女は日本出身で今年初めてアプリを公開した。彼女はわが社の史上最高齢のプログラマーである」と紹介し、壇上で若宮さんにハグした。
若宮さんが開発したアプリは「Hinadan」(ひなだん)。雛人形を正しい位置に配置するシニア向けのシンプルなゲームだ。若宮さんは専門学校に行ったこともなく、独学でコンピュータープログラムをマスターした。60歳の定年後、母親の介護で家から出られなくなった時、「コンピューターがあれば、世界とおしゃべりできる」という雑誌記事を見た。すぐにパソコンを購入。高齢者が集まるインターネット上の掲示板に接続、コンピューターのイロハを知り合った仲間から教えてもらった。その時の感動は今でも忘れられない。
若宮さん「ウエルカムメッセージをみんな送ってくれるのです。『人生60歳を過ぎると面白くなります』と書いてありました」
若宮さんは自分の経験を活かし、高齢者にパソコンを教える活動で日本中を飛び回っている。若宮さんは語る。
若宮さん「何かを始めるのに遅いということはありません。いつまでも好奇心を持って好きなことを続けられることが幸せです」
最後に飯島教授がこう説明した。
飯島教授「私も幅広く高齢者の方々とお付き合いしていますが、単に健康増進のために何かをやっている人よりは、むしろ好きだから続けてきたとか、今までやれなかったが、やっとやれる時間ができて続けている人の方が若々しいケースが多いです。健康になるために何かを頑張るのではなく、好きなことをしたいから頑張っていると結果的に健康になるということです」