玄米や全粒粉パンなどの全粒穀物には心臓病予防などの健康効果が知られているが、大腸がんの予防にも効果があることが2900万人を対象にした世界的規模の研究で明らかになった。
米国立がん研究所(AICR)と世界がん研究基金(WSRF)の共同研究チームがまとめた報告書が、AICRの機関誌「American Institute for Cancer Research」(電子版)の2017年9月11日号に発表された。
全粒穀物は心筋梗塞や糖尿病の予防にも効く
全粒穀物(全粒粉パン・玄米・雑穀類)の健康効果については、デンマーク・オーフス大学の研究チームが2016年2月、全粒穀物をよく食べる人は、ほとんど食べない人に比べ、心筋梗塞を発症するリスクは男性で25%、女性で27%も低いという調査報告を発表している。また、米ハーバード大学も2015年5月、全粒穀物をよく食べる人は食べない人に比べ、糖尿病を発症するリスクが最大で35%も低くなるという研究を発表している。
全粒穀物がなぜ健康によいのか。ハーバード大学の研究者はプレスリリースの中でこう説明している。――小麦を例にとると、小麦の栄養分のビタミン類や鉄、マグネシウム、カリウム、リンなどの半分近くが外皮、胚乳、胚芽に含まれている。特に食物繊維はほとんどが外皮に含まれている。ところが、小麦粉に精製される過程でこれらの大半が失われてしまう。全粒穀物は抗酸化作用があるフィトケミカルを豊富に含んでおり、細胞の老化を防ぎ、血液をサラサラにする効果があるため糖尿病や心臓病の予防に役立つ――。
さて、「AICR」の報告書によると、大腸がんは世界的に急増しており、2012年のデータでは新しく140万人が大腸がんになり、70万人が死亡した。発症数、死亡数ともすべてのがんの中で4番目に多くなった。そこで、将来、大腸がん予防の国際的ガイドラインを作成するためのデータ集めとして、これまで大腸がんと食生活、生活習慣、肥満、身体活動などとの関係を調査した99件の論文を分析した。調査対象者の合計は世界各国の2900万人(そのうち大腸がん患者は24万7000人)に達する大規模なものだ。