「愛は地球、ならぬ肥満を救う?」――。「愛情ホルモン」として知られるオキシトシンに肥満の抑制効果があることが、福島県立医科大学の下村健寿教授、前島裕子助教授らと高須クリニック(高須克弥院長)との共同研究で明らかになった。
オキシトシンを含むエサを食べたマウスは、体脂肪が15~20%も減ったうえ、太ったマウスほど効果が高いという。研究成果は英科学誌「Scientific Reports」(電子版)の2017年8月17日号に発表された。
10日間で内臓・皮下脂肪が15~20%も減少
オキシトシンは、脳の下垂体から分泌されるホルモンで、心を癒したり、幸せな気分にしたりする効果がある。特に、女性が妊娠・出産する時や授乳する時に多く分泌され「愛情ホルモン」と呼ばれている。赤ちゃんを「愛おしい」「守りたい」と感じる母性愛の源だ。母子関係やカップル間の絆を深める働きをするほか、飼い主と犬が遊んでいる時にも双方に分泌される。最近では、自閉症など社会生活に適応できない人にオキシトシンを投与すると、コミュニケーション能力が向上することが明らかになり、幅広い行動に作用していることがわかっている。
そのオキシトシンが肥満にどう関係するのか。福島県立医科大学の発表資料によると、研究チームは、高脂肪食を与え太ったマウス(体脂肪率36%)から、通常食を与え太っていないマウス(体脂肪率10%)まで、様々な肥満度のマウスにオキシトシンを皮下注射で10日間連続投与して、体重の減少効果を比較した。コンピューター断層撮影(CT)で内臓脂肪や皮下脂肪の量を調べると、太ったマウスは脂肪量が15~20%も減少した。一方、太っていないマウスの減少率はオスで3%だけ、メスはほとんど効果がなかった。太ったマウスほど肥満抑制効果が大きかった。
今回の研究についてJ-CASTヘルスケアは下村教授に取材した。
――「愛情ホルモン」のオキシトシンが、肥満の抑制にも効果があるのはどういうメカニズムからでしょうか?
下村教授「オキシトシンは、分娩や授乳にかかわるホルモンとして知られています。これらは、オキシトシンが脳に働きかけるからだと考えられています。近年、非常に多彩な作用があることがわかってきました。母子関係や社会的コミュニケーションに与える影響に加え、摂食や体重を制御する作用も明らかになっています。私たちの検討では今回、オキシトシンは脳に作用し(食欲を抑えて)食べる量を減らすだけでなく、末梢の臓器にも作用しエネルギー消費量を増加させ、内臓脂肪と皮下脂肪をともに減少させたと考えています」