【あさイチ】(NHK総合)2017年9月11日放送
「40代からの脳梗塞対策」
脳の血管が詰まり、周りの脳細胞が壊死する「脳梗塞」。高齢者がかかると思われがちだが、タレントの磯野貴理子は2014年、50歳で発症した。
脳梗塞になるかどうかは、40代からの過ごし方が重要だ。「自分はまだ若いから大丈夫」と過信せず、早いうちからリスクを減らす生活を心がけよう。
磯野貴理子「持って行く着替えが決められなかった」
磯野の発症は突然で、痛みもなく、寝て起きたら様子が変だったという。
その日はダンスの稽古がある予定で、汗をかくから稽古着を持って行かなきゃと考えていたが、どの服を持っていけばいいか決められない。夫と会話していたが、自分ではしゃべれているつもりがすでにろれつが回っていなかった。夫が救急車を呼んでくれ、早期に治療ができたので、今ではすっかり元気に仕事もしている。
磯野の脳梗塞を引き起こしたのは、心臓の不調だった。
心臓には4つの部屋があり、一定のリズムで動いている。ところが、左心房の収縮が不規則になって細かく震える「心房細動」という不整脈が発生すると、左心房の中の血液がよどみ始め、血液が固まりやすくなり血栓が生じる。この血栓が血流に乗って脳に運ばれ、血管を詰まらせると脳梗塞となる。
いつものペースで歩いていたり、普段通り生活していたりする時に、(1)息が切れやすい(2)階段や坂を上るのがきつい(3)動悸がすると感じたら、不整脈を疑うべし。
この時、脈を取ると不整脈かどうか判断しやすくなる。
手首をそらせ、親指の付け根の下に反対の手の指を3本揃えて当てる。1分ほど続けて、脈がリズムよく打っているか確認しよう。
過度な飲酒は不整脈を起こしやすいので要注意だ。1日の摂取量の目安は、ビールなら500ミリリットル、日本酒は1合、ワインは2杯弱(1杯120ミリリットル)、焼酎(25度)はコップ2分の1杯(100ミリリットル)だ。
脳梗塞になる前はガンガン飲酒していた磯野だが、かかってからはスパッとやめたそうだ。ストレスがたまらないかと聞かれたが、「飲むのが怖くなっちゃった」という。
更年期に高血圧が起こる原因は
女性が気を付けたいのは、「更年期高血圧」だ。
血管を守る働きがある女性ホルモン「エストロゲン」が更年期になると分泌が減少し、血管のしなやかさが失われ「動脈硬化」を起こす。動脈硬化が進むと全身に血流を回すのに負荷がかかるため血圧が上がる。高血圧が続くと血管の壁が傷付きやすくなり、傷にコレステロールなどの成分がたまって「プラーク」というふくらみができる。プラークが破れるとそこに血栓が作られ、はがれて脳の血管を詰まらせると脳梗塞となる。
普段は特に高血圧ではないが、妊娠・出産時に高血圧や尿たんぱくが出た人は、更年期高血圧になりやすいので要注意だ。
異変に気付くには、自分の血圧を把握しておく必要がある。自宅ではかる場合、朝起きてすぐ、まだ活動していない時にはかるのがベストだ。日中でも、5分ほど何もせずゆっくりした時にはかると、安定した数値が出る。
家庭用の機器では、最高が135以上、最低が85以上だと高血圧が疑われる。病院で相談すれば、生活改善で様子を見ればよいか薬で治療すべきかわかるので、高血圧だと思ったら受診しよう。
脳の専門医が実践している予防法
番組では、脳の専門医である、国立循環器病研究センターの山本晴子氏が自ら実践している脳梗塞の予防法が紹介された。
まずは「普段からちょっと早歩き」。普通に歩くよりも早歩きの方が運動強度が高まる。少し息が上がる程度のペースがよい。
早歩き以外にも、「手やひざをついて浴室みがき」「自転車」「階段を上る」など、軽い運動や、普段の行動を少し力を入れて行うと、血圧が下がる上、体重のコントロールもしやすくなる。
食物繊維が多めの食事にするため、野菜を摂(と)るのも心がけている。食物繊維は脳梗塞の予防につながると研究で明らかになっている。
水分不足で血液がドロドロになると脳梗塞の危険が高まるので、水分をしっかり摂るのも重要だ。水を1日1~1.5リットル飲むのが目安で、食事の度に300ミリリットル飲むようにすれば無理なく適量の水分補給ができる。
脳梗塞は、早い段階での治療が生死を分ける。体の片側がまひしている、視野が半分欠ける、ろれつが回らない、ふらついて歩けないなどの症状が出たらすぐに受診するのが大切だ。
発症から4.5時間以内なら、血栓を溶かす「t-PA」という点滴での治療が可能だ。それを過ぎても8時間以内なら、血管内にカテーテルを入れて血栓を取り出す「血管内治療」ができる。ただし、まだ専門医は少ない治療法で、どの病院でも行われているわけではない。「日本脳神経血管内治療学会」のサイトでは、治療が受けられる病院が掲載されている。
発症した時刻がわからない場合は「最後に元気だった時刻」から数えることになり、適切な治療法を決めるのに時間がかかってしまうおそれもある。なるべく、おかしいと感じ始めた時刻を記録するとよい。
家族が発症してしまった時は、救急車が来るまでは布団などに移動させず、その場で安静にさせておこう。突然吐く場合があるので、口内の吐しゃ物をすぐ出せるように構えておく。水を飲ませるのはやめた方がよい。他の病気の治療中なら、おくすり手帳を準備しておこう。