米歌手のセレーナ・ゴメスさん(25)がインスタグラムで、難病「全身性エリテマトーデス」(SLE)治療のため、親友から生体腎移植を受けていたと明かした。
インスタにはゴメスさんと、腎臓を提供したフランシア・ライザさんが病院のベッドに横になり、手をつないで優しく微笑んでいる写真が掲載されている。こうした友人間での生体腎移植、日本ではできないようだ。
日本国内では「親族6親等、姻族3親等まで」
ゴメスさんは2015年、自身がSLEであることを公表した。日本では指定難病のひとつだ。「難病情報センター」のウェブサイトによると、発熱や全身の倦怠感、食欲不振に加えて、皮膚や関節、さらには腎臓など臓器にも障害が現れる人もいる。大きな特徴は皮膚症状で、頬に赤い発疹が出るが、まるで蝶が羽を広げているような形になるため「蝶型紅斑(バタフライ・ラッシュ)」と呼ばれる。
日本での患者数は6~10万と推定される。男女比は1:9と圧倒的に女性が多い。病気の研究は進んでいるが、原因は分かっていない。ただ「自分自身の体を、免疫系が攻撃してしまう病気」で、全身にさまざまな炎症を引き起こす。治療はステロイド剤の投与のほか、高血圧を伴う場合は腎機能障害の進行を防ぐため積極的な降圧療法を、腎機能が急速に悪化する場合は早期の血液透析導入を考慮する。
5年生存率は95%以上と高くなった。ただ予後を左右する病態のひとつに「ループス腎炎」がある。ゴメスさんはインスタに「ループスのため腎移植が必要となった。健康全般のためには必要だった」と書いていた。
複数の病院のサイトには、腎移植に関する詳しい説明がある。例えば東京医科大学八王子医療センターのサイトを見ると、血液型が違っても移植可能、腎臓を提供するドナーの年齢は60~65歳程度を一応の目安としている、ドナーの腎臓がひとつになると、検査上の腎機能は低下するが「日常生活上は支障を来すことはありません。また一つになったことで寿命が短くなることはありません」という。
最も基本となる「誰がドナーとなれるか」について、生体腎移植では「親族6親等、姻族3親等までが可能」とある。ここに友人は含まれていない。
夫婦間、異なる血液型、高齢者の移植が増加
名古屋大学のサイトにはさらに明確に、「本人の希望があっても、友人や善意の第三者の方からの生体腎移植はできません」と書かれている。ゴメスさんが手術を受けた米国とは、事情が異なるようだ。
日本国内の場合、日本移植学会の倫理規定として「原則として親族(6 親等以内の血族と配偶者および 3 親等以内の姻族)に限定する」と決められている。名大のサイトにもこのことが明記されており、「実際には、両親や兄弟(姉妹)、配偶者からの移植が多く行われています」と補足がある。
日本移植学会の「臓器移植ファクトブック2016」によると、2015年に行われた生体腎移植は1494例で、前年から17例増となった。死体腎移植(献腎移植)と合わせて移植数全体が増加傾向にあるが、押し上げているのは生体腎移植だという。これは「夫婦間など非血縁間の移植、血液型不適合移植、高齢者の移植」の増加と、「献腎移植を希望し腎移植登録しているにもかかわらず提供者が少ないために、生体腎移植に踏み切る症例もあることが予測されます」とのこと。
有名人では演歌歌手の松原のぶえさん(66)が2009年、腎不全のため生体腎移植手術を受けたが、ドナーは実弟だった。松原さんは現在も、元気に歌手活動を続けている。