緊迫する北朝鮮情勢をめぐり、米国のマティス国務長官が2017年9月18日(米東部時間)の記者会見で、「ソウルを重大な危険にさらさずに」北朝鮮に対して軍事的な対応が可能だと述べた。詳細は明言を避けたが、その内容は憶測を呼びそうだ。
トランプ政権の対北朝鮮政策をめぐっては、「右腕」だとされてきたバノン首席戦略官が、ソウル市民を死傷させずに北朝鮮を攻撃するという「方程式」が解けないとして軍事的行動には否定的見解を示していた。直後にバノン氏は解任されたが、果たして「方程式」は解けたのか。
ヘイリー大使「北朝鮮に対して多くの軍事的選択肢がある」
マティス氏の発言は、米国のヘイリー国連大使が
「北朝鮮に対して多くの軍事的選択肢がある」
と発言したことに関連して出た。ヘイリー氏の真意を問う質問に対して、マティス氏は
「ヘイリー大使は正しい」
としながら、メキシコやペルーが北朝鮮大使を「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましからざる人物)に指定して追放を決めたことを引き合いに、「圧力外交」が奏功していることを強調。その上で、
「ソウルを重大な危険にさらさずに、米国が北朝鮮に対して取り得る軍事的選択肢はあるのか」
という記者の質問に対して、
「あるが、詳細には触れない」
と述べた。
攻撃の最初の30分でソウル市民1000万人が死なない、という「方程式」
実はつい1か月ほど前には、トランプ政権の一部では正反対の意見が出ていた。トランプ大統領の「右腕」として知られたホワイトハウスのバノン首席戦略官は、左派系ニュースサイト「アメリカン・プロスペクト」8月16日付のインタビューで、
「通常兵器(による攻撃)の最初の30分でソウルの1000万人が死なない、という方程式の一部を誰かが解くまでは軍事的解決はない」
などと軍事的選択肢を否定する発言をしていた。バノン氏はその2日後の8月18日に主席戦略官を解任されている。韓国メディアでは、マティス氏の発言は、バノン氏の発言を打ち消す狙いがあるとの見方も出ている。
マティス氏はこの会見の中で、米軍の戦術核兵器の再配備について韓国側と協議していることも明らかにした。
今回のマティス氏の発言との関連は明らかではないが、韓国の宋永武(ソン・ヨンム)国防相は9月4日に開かれた国会の委員会で、金正恩委員長を直接狙う、いわゆる「斬首作戦」について、「概念を確立中」としながらも、12月1日付で部隊を新設する考えを示している。