DeNAがアクセル踏む新事業 脱「ゲーム一本足」が急務

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   DeNA(ディー・エヌ・エー)が、人工知能(AI)などの技術を生かす自動車関連事業の強化を急いでいる。グーグルなど米国のIT企業も成長が見込める自動車を主要なターゲットにしており、DeNAとしても主力のゲーム以外の事業として育てたい考えだ。経営の柱になるはずだった、インターネット上で記事をまとめる「キュレーションメディア」事業が記事盗用や不正確な医療情報の掲載をきっかけに事実上の撤退に追い込まれており、新たな事業の育成が急務となっていることも背景にある。

   2017年9月4日に発表したのは、AIを活用したタクシー配車サービスの実証実験だ。12日に所有するプロ野球球団ベイスターズの本拠地でもある横浜市中心部で始めたもので、インストールしたスマートフォンの専用アプリでタクシーを指定した場所に呼び出せる。待っている間、予約したタクシーがどこを走っているかが分かる。クレジットカードを事前登録して決済するなら、車内で料金を支払わずに済む。AIは天候やイベントの有無などから需要を予測し、効率的な配車につなげる。10月いっぱいまで実施し、18年早期の本格導入を目指す。

  • DeNAは自動車関連事業で勝負できるのか(画像はイメージ)
    DeNAは自動車関連事業で勝負できるのか(画像はイメージ)
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流通、バス、交通サービスのプラットフォーム...

   他に、ヤマト運輸と組んだ実証実験が「ロボネコヤマト」。DeNAのIT技術を活用した自動運転関連システムと、ヤマトの物流ネットワークを組み合わせ、配送車から直接荷物を受けとるもの。昨16年春から神奈川県藤沢市の湘南海岸地区で始まった。ヤマトのサイトにログインし、配送場所と時間を10分単位で指定。到着の3分前に電話があり、車が到着したら、暗証番号などでロックを解除し荷物を受け取る。18年には注文を受けたAIが効率的なルートを配送車に指定するなどの実験も行う予定だ。

   DeNAの短距離無人運転バス「ロボットシャトル」を使った国土交通省の実証実験も、2017年度行われている。過疎化や高齢化が進む中山間地域で全国十数か所の「道の駅」を拠点に2キロ程度運行。実験中はシャトルの通行路に柵を設けて車や人が入れないようにする。

   一方、日産自動車と提携し、日産の自動運転車両を活用した新たな交通サービスのプラットフォーム(基盤)を開発することを2017年1月に発表している。第1弾として、日産製の自動運転車両を用いた技術的な実証実験を国内で始め、20年までに無人運転による交通サービスシステムの開発を進める。DeNAとしては、インターネットサービス部分の設計・運営や自治体との調整・連携を行う予定だ。

競争が激しい分野

   自動車関連事業を加速する背景にはキュレーションメディア事業の挫折がある。ゲームに次ぐ事業と見立てていたが、信用力を失った今、再建は容易ではない。稼ぎ頭のゲーム事業は任天堂との協業「スーパーマリオ ラン」などの配信が好調で、2017年3月期に分野別営業利益が前期比9.1%増の282億円に達した。これは連結営業利益231億円を大きく上回る。

   つまり、ゲーム事業が、あまり稼ぎのないEコマース事業やプロ野球球団に代わって利益を生み出し、損失が発生している新規事業をカバーしている、というのが17年3月期の実態だ。かつてシャープが「液晶一本足」だったゆえに経営が悪化したこともある。DeNAが経営のリスク管理上、「ゲーム一本足」を避けるターゲットが自動車関連事業と言える。

   ただ、DeNAが自動車関連事業に参入していると言っても、多くは政府や大企業による実証実験を共同展開している段階だ。花を咲かせるためには今少し忍耐の時期が続くだろう。自動運転などの技術開発は世界中の企業がアプローチしており、競争が激しい分野でもある。DeNAにとってその真価が問われる時期となっているとも言えそうだ。

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