前回に続いて「フランスから見たトランプのアメリカ」をお伝えする。
「(テロに怯える)パリはもはや、パリではない(Paris is not Paris any more.)」とトランプ大統領が語り、フランスで不評を買ったことに前回、触れたが、そのパリでまた、数日前に警戒中の兵士を刃物で襲うテロ未遂事件が起きた。
欧州の移民排斥は今に始まったことではない
欧州諸国では、合法移民がテロを起こすケースが問題となっていることから、移民への風当たりが強まっている。とはいえ、もちろん、移民排斥は今に始まったことではない。
フランスでは第一次・第二次世界大戦でともに大きな被害を受け、人口が急激に減少。労働力を補うために、国家をあげて積極的に移民を受け入れてきた。
1973年にフランスで出版された小説「Le Camp des Saints(聖人たちのキャンプ)」は、アフリカやアジアからのフランスなど西洋諸国への難民や移民が、西洋文化を崩壊させるという内容だ。トランプ大統領の元首席戦略官、スティーブ・バノン氏がよく引用していたのが、この小説だった。
パリのセーヌ川沿いで犬を散歩させていた70代くらいの女性は、日本人である私にためらいがちにつぶやいた。「パリは変わってしまった。地下鉄で見回してみれば、一目瞭然。移民があふれんばかりに乗っているわ」。
フランス北部に住む60代の女性画家は、 「移民がこれほど増えたのは、これまでの大統領が先送りし続けてきたから」と厳しく批判する。