日本国内市場に格安航空会社(LCC)参入が相次ぎ「LCC元年」と言われた2012年から5年。当初は、既存の航空会社と競合する可能性から採算が危ぶまれていたLCCも、黒字転換する会社が増えてきた。
LCCの参入で乗客数が増える地方空港も多い。中でもジェットスター・ジャパンは2017年9月14日、国内で12都市目の就航地として宮崎空港に新たに乗り入れることを発表し、長崎空港への乗り入れを検討していることも明らかにした。長崎空港への乗り入れが実現すれば、九州・沖縄地区の全県の空港と首都圏がLCCで結ばれることになる。
九州・沖縄全県が成田とLCCで結ばれる
成田空港を主な拠点にするジェットスター・ジャパンは就航初年度の13年6月期の決算では60億円の営業赤字を計上し、それ以降も赤字が続いていたが、16年6月期の決算で就航以来初の単年度黒字化を達成。17年9月14日に発表した17年6月期の決算でも黒字を維持(営業利益は約11億円の黒字)した。
この日の会見で、成田―宮崎線を新設することを発表。便数などの詳細は9月20日に宮崎県庁で記者会見して改めて発表する。これに加えて、18年夏スケジュール(18年3月下旬~)以降に成田―長崎線の開設を検討していることも明らかにした。同社はすでに、九州・沖縄地区では福岡、大分、熊本、鹿児島、那覇の各空港に乗り入れており、長崎乗り入れが実現すれば、佐賀県以外の全県の空港に乗り入れが実現する。すでに佐賀空港には春秋航空日本が成田から乗り入れているため、九州各県が成田とLCCで結ばれることになる。
ジェットスターが関西や福岡といった基幹空港以外の地方空港に初めて乗り入れたのは13年3月末の大分空港線だ。同空港の国内線旅客数は12年度は146万人だったが、13年度は170万人に急増。その後も同様の水準で推移している。
片岡優社長はこういった点を念頭に、乗り入れている九州の地方空港について
「(LCCではない)フルサービスの航空会社との競合もなく、全体のパイを増やしている」
「新たな需要を創出しているという成功例」
と強調しながら、他の乗り入れ空港についても「同じような現象が見られている」とした。
羽田発着路線では宮崎、長崎は「ベスト10」入り
国土交通省のまとめでは、羽田空港を発着する路線のうち、宮崎、長崎路線の乗客はそれぞれ10番目、8番目に多い。両空港以外の「ベスト10」の大半はすでに成田から乗り入れを実現していることから、片岡氏は
「成田―宮崎、長崎というのは非常に有望な路線として、ポテンシャルのある路線として社内では評価している」
と話した。
「LCCの参入がパイを広げる」という点はジェットスター以外のLCCでも同様だ。17年3月期の決算で4機連続の増収増益を達成したピーチ・アビエーションは、13年4月に関西-仙台線を開設して仙台空港に乗り入れた。12年度の仙台空港の国内線利用者は251万人だったが、乗り入れ後の13年度は299万人に急増。その後も約300万人で推移している。同社は17年9月24日から仙台空港を関西、那覇、成田に続く「第4の拠点」と位置づけ、仙台と札幌(新千歳)、台北(桃園)を結ぶ路線を新設する。
国土交通省のまとめによると、国内線全体の輸送人員は、国内線LCCが本格参入する前の11年度は7664万人だったが、翌12年度は8288万人に。16年度には9502万人に増えている。