少量の飲酒なら妊娠中でも問題はない? 英国民保健サービスが調査を行った結果は...

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   「妊娠中に飲酒をしてはいけない」という話は、半ば常識として知られていることだろう。

   母親が常習的にアルコールを摂取していると「胎児性アルコール症候群(FASD)」という先天性疾患を胎児が発症する。形態異常や脳萎縮、発育不全などのリスクも飛躍的に高まる。

   では、ほんの一口飲んでしまった場合の影響はどうなのか。英国民保健サービス(NHS)とブリストル大学、英国立健康研究所(NIHR)などの共同研究チームが検証を行い、2017年8月3日に英国医師会誌に報告した。

  • 少なければ大丈夫というものではありません
    少なければ大丈夫というものではありません
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ちょっとなら大丈夫だと思っている?

   NHSはもちろん、日本産婦人科学会の「産婦人科診療ガイドライン」や米国小児科学会など、世界各国の医学会で「妊娠中に飲酒は禁忌」が共通の認識となっている。

   NHSでは妊娠中はもちろん、妊娠を予定している女性も胎児のリスクを最小限に抑えるために、予め飲酒を控えるよう呼びかけているほどだ。

   しかし、NHSによると「ほんの一杯くらいを飲む程度なら問題はないんでしょうか」と医師らが尋ねられることがしばしばあり、厳密な指導を行うためにも飲酒量と胎児のリスクの関係を調査する必要があると考えたという。

   実際、いくつかのデータから妊婦の飲酒実態も浮かび上がっている。厚労省が公表しているデータでは2010年時点で妊娠中の女性の飲酒率は8.7%、米国疾病対策予防センター(CDC)は米国在住の妊婦の10人に1人が1か月に複数回飲酒をしていると報告。

   なぜ妊娠中なのに飲酒をするのかまではわからないが、「少量なら問題ないのでは」と考えてしまう人がいる可能性は十分にある。

   今回の研究では、妊娠中の飲酒と胎児の健康状態の関係を分析した論文から、低~中程度の飲酒、具体的には1週間に2回未満で合計アルコール2単位(約32グラム、ワイングラスに2杯、ビールパイントグラス2杯)以下の場合に胎児が受ける影響を調査した論文24本を分析した。

   アルコール2単位は、NHSが飲酒ガイドラインで定めた安全とされる飲酒量の限界値だ。

   分析の結果明らかになったのは、中程度の飲酒によって妊娠期間が短くなる(出産予定日が早まる)リスクが飲酒をしなかった場合に比べ8%増加したというもののみで、胎児の低体重や発育不全、機能障害などのリスクを示すものはなかった。出生体重に関しては、低~中程度の飲酒と飲酒をしていない場合で差がないという結果も出ている。

   つまり、妊娠中に少量の飲酒をした場合のリスクについて確固たる結論に達するための十分なデータが得られなかったのだ。

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