ウイルス病の流行性耳下腺炎 (おたふく風邪、ムンプス) から難聴になった子どもらが2015、16年に少なくとも336人もいたことが日本耳鼻咽喉科学会 (森山寛理事長) の調査でわかった。日本は先進国で唯一、ワクチンが任意接種のため接種率が低いことが背景にあるという。
同学会は2017年9月5日、記者会見でこの調査結果を発表し、国に対し、早期の定期接種化を要望していく方針を明らかにした。
「予防できる難聴がこんなに多いのは残念だ」
同学会乳幼児委員会に対し、4都道府県の3546病・医院 (回答率64%) が回答した。二次調査に応じた314人のうち両側難聴は14人で、片側が300人。両側14人のうち 7人は人工内耳埋め込み手術を受け、4人が補聴器を使っていた。また、8割の261人が障害者等級3級以上の高度難聴で、音の来る方向がわからなかったり、騒音下では聞き取りにくいなど日常生活に支障があった。年齢別では10歳未満、10代、30代の順に多く、半数は子どもで、あとは子育て世代に目立っている。
流行性耳下腺炎(M)と、麻疹 (M)、風しん(R)を対象にした3種混合のMMRワクチンが1989年から定期接種になったが、無菌性髄膜炎の多発が社会問題になり、93年に接種中止になった。以後、流行性耳下腺炎ワクチンは単独で任意接種となった。任意接種は国が推奨していないワクチン、との誤解や、無菌性髄膜炎以上に、問題の難聴後遺症があまり知られていない、などから接種率は30%から40%程度に落ちている。このため、先進国では珍しい流行がいまも後を絶たない。
森山理事長は「予防できる難聴がこんなに多いのは残念だ。行政などの関係者や国民にも広くこのワクチンの重要性を知っていただきたい」と話している。
(医療ジャーナリスト・田辺功)