米のアメリカンフットボールリーグ「NFL」の選手が、プレー中の衝突やタックルで受ける脳のダメージが社会問題になっているが、元NFL選手のなんと99%が脳に重大な障害を負っていることがわかった。
米ボストン大学の研究チームが死亡した選手たちから提供された脳のサンプルを分析、米医師会誌「JAMA」(電子版)の2017年7月25日号に発表した。
MRIやCTスキャンの脳画像では写らない病気
「JAMA」の論文要旨によると、研究チームは2014年以降に死亡したアメリカンフットボールの現役選手・元選手の「脳献体プログラム」を使い、202人の選手の脳サンプルを分析した。202人の平均年齢は67歳で、NFLの元選手から高校生や大学生、カナダの選手らも含まれている。
その結果、次のことがわかった。
(1)202人のうち177人(86%)に「慢性外傷性脳症」の病変が見られた。最高レベルの元NFLの選手111人では110人(99%)に慢性外傷性脳症の病変があった。慢性外傷性脳症は、ボクシングやアメフト、柔道の選手などに多い病気だ。プレー中に脳への打撃が繰り返され、何度も脳しんとうを起こすと発症する脳神経系の病気だ。記憶障害やめまい、うつ病、認知機能の低下など認知症やパーキンソン病に似た症状が起こる。しかし、MRIやCTスキャンなどの脳画像には病変が写りにくいため、診断がつきにくい厄介な病気だ。死後に脳を解剖して初めてわかるが多いことから、この診断名がついた。
(2)高校生や大学生にも軽度の慢性外傷性脳症の病変が見られた。
(3)重度の慢性外傷性脳症の病変があった84人を調べると、80人(95%)が認知症を発症していた。
この結果から研究チームは「アメフトの選手は、プレーを通じて度重なる衝撃が脳に加えられた結果、慢性外傷性脳症になる危険性が非常に高いといえます。また、慢性外傷性脳症が認知症を引き起こしている可能性もあります。慢性外傷性脳症の症状は、選手が引退してから何年もたってから現れます」と警告している。