産経新聞は2017年9月15日の紙面で、同紙が「東京新聞に抗議」したとの記事を掲載した。抗議の理由は、東京新聞に対する首相官邸報道室からの「注意文書」をめぐる、東京新聞の望月衣塑子(いそこ)記者の発言を受けてのものだ。
望月記者は6月以降、いわゆる「加計学園問題」で舌鋒鋭く菅義偉官房長官を追及し続けたことで知名度が上昇中。厳しい質問を浴びせる姿で名を上げてきた。
産経「官邸報道室 東京新聞を注意『不適切質問で国民に誤解』」
望月記者は15日午後の官房長官会見で、質問に先立ち「はじめに、昨日(14日)の質問のところで、官邸から配布の注意文書について、『官邸が産経にリークした』と私が質問してしまいましたが、全社に出していたということで誤りでした。撤回して謝罪をしたいと思います」と述べた。それ以上はこの問題について語られず、別の質問に移っていった。
望月記者が撤回したのは、14日午前の官房長官会見での発言だ。東京新聞に対し、官邸報道室から「注意文書」が1日付で送付されていたところ、産経新聞が2日の紙面で「官邸報道室 東京新聞を注意『不適切質問で国民に誤解』」の見出しでこの「注意文書」について報道していた。これについて望月記者が「注意文書のことが(官邸から)産経新聞になぜかリークとして記事が出て、また、これまでの官房長官とのやり取りもいくつも記事にされていた。その中で、個人の記者に対する誹謗中傷が、私事だが、かなり進んできていると感じる」と発言していた。
「注意文書」は「内閣記者会の常駐各社に配布」されていた
すると産経新聞は15日の紙面で、望月記者の発言について「配布の注意文書『官邸が産経にリーク』 本紙、東京新聞に抗議」の見出しで掲載。「産経新聞社は14日、『事実無根であり、社の名誉と信用を著しく毀損するもので看過できない』として発言撤回を求める抗議文を東京新聞編集局長宛てに送付した」と報じている。
この産経記事によると、望月記者が「リーク」と表現した「注意文書」は、東京新聞官邸キャップが了承した上で「内閣記者会の常駐各社に配布」されていた。産経はその配布された文書にもとづいて上記2日紙面の記事を執筆・掲載していた。望月記者はこうした事実関係を確認した上で、15日の撤回・謝罪に至ったと思われる。
なお「注意文書」の送付は、8月25日の官房長官会見における望月記者の発言に端を発している。学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画に関し、「大学設置・学校法人審議会」が出した答申の内容について、正式発表前にもかかわらず望月記者が言及した。官房長官会見はインターネットで視聴可能であることなどから、菅長官は「オープンな会見」(9月14日会見での発言)としている。そのような場で正式発表前の答申内容に触れたことから、官邸報道室は東京新聞に対し、再発防止の徹底に努めるよう「注意文書」を送付していた。
望月記者は15日の会見で、謝罪した後、「それで今日の北朝鮮ミサイル発射についてですが...」と、質問に切り替えた。