「地政学リスク」への懸念で、リスク回避の「円買い」が続いている。
日本政府の発表によると、2017年9月15日7時ごろ、北朝鮮がミサイルを発射。ミサイルは日本上空を通過して、北海道・襟裳岬沖の東約2200キロの太平洋上に落下した。これを受け、円相場は一時急伸。7時すぎに1ドル109円55銭近辺まで上昇した。「有事の円高」がすっかり定着したようだ。
「有事の円買い」個人投資家にも浸透
日本政府の北朝鮮ミサイル発射の発表後、日本円が値を上げた。1ドル109円55銭は、東京外国為替市場の前日の9月14日17時時点と比べて85銭の円高・ドル安水準になる。
北朝鮮のミサイル発射について、外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は、「昨日来の報道で発射が想定内であることや、スケールの面などでサプライズもなく、直接的な被害も確認されていないことで、それほど暗いムードにはならないのではないかと考えています」とみている。
その後、詳細が明らかになるにつれて、円は1ドル110円台まで押し戻されている。
米韓合同軍事演習が始まった8月21日以降、北朝鮮との緊張は高まった。北朝鮮は29日朝にミサイルを発射。9月3日には、1年ぶり6回目の核実験を実施した。過去最大級の規模とされ、大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆という。
7回目の核実験があるのではないか――。北朝鮮建国記念日にあたる9月9日の前日8日の東京外国為替市場で、円相場は大幅に反発。17時時点で1ドル107円71~74銭と、前日比1円28銭もの円高・ドル安となった。
この日は北朝鮮情勢に対する警戒感が円買いを後押し。また、米国の長期金利が低下(債券価格は上昇)したことで、円やユーロに対するドル売りもあった。
こうした「有事の円買い」に、前出の神田氏は「リスク回避は『円買い』というパターンは、もう投機筋などで反射的に行われていますね。日本を直接(攻撃の)対象としていても、『そういったもの』とスリ込まれていて、定着しつつあります」と話す。
「有事の円買い」は、外国為替証拠金取引(FX)を手がける個人投資家にも浸透してきており、投機筋の動きに呼応して、「買いが買いを呼ぶ」展開になっているとみられる。