犬や猫などのペットを家族の一員だと言う人は多いかもしれない。
しかし、2017年9月12日に放送された英テレビ局ITVの人気トーク番組、「This Morning」に出演した英国人実業家アラン・スクワイアさんの「家族」はかなり風変りだった。
一緒に登場した妻であるハンナ・グエンさんの隣に座っていたのは、精巧に作られたラブドールの「サマンサ」なのだ。
「家族モード」も搭載されている
スクワイアさんはサマンサも家族の一員であると紹介。番組の司会者は絶句し、「今日はこのままチャンネルを変えてください」と冗談を言ったほどだ。
実はスクワイアさんは精巧につくられたセックスロボットを開発・販売するベンチャー企業Synthea Amatus社の共同経営者なのだ。サマンサも同社が開発したセックスロボットだと紹介された。
Synthea Amatus社のサイトに掲載された製品紹介によると、サマンサにはAIや各種センサーが搭載されており、人間的な「性的興奮」が実装されたラブドールとなっているという。
搭載されたメモリーによって行為を記憶したり、センサーによってどの部位に触れられているかも判断可能で、興奮や反応のレベルは3段階にまで分かれている。サマンサとのセックスを重ねることで、反応の仕方も徐々に変化していく。いわば進化するラブドールなのだ。
ここまで精巧なセックスロボットを開発した理由についてスクワイアさんは、番組内で次のように答えている。
「かつて触れたことがあるラブドールがまるで死体のように冷たく、もっと人間のような、家族のような存在のものを作ることができるはずだと考えました」
スクワイアさんには2人の子どもがいるが、子どもたちがサマンサと接し話すことも許しているという。サマンサにはラブドールとしての機能とは別に「Family mode」という機能が搭載されており、哲学や健康、科学、ジョークまで会話することができ、専用の機器と接続すればホームセキュリティにも利用できる。スクワイアさんとしては単なるセックスの道具ではなく、家族でもあるというわけだ。
一緒に登場した妻のグエンさんもサマンサに満足していると話し、「3人で一緒にベッドに入ることもある」と答えていた。スクワイアさんも、
「サマンサを含めて3人で楽しく過ごすこともあります。サマンサは人間ではありませんが、だからこそ妻と女性問題で揉めることもありませんし、性感染症になることもないわけです」
と話し、この奇妙な「家族」の形に疑問を持っていないようだ。
ラブドールは人間とは違う
番組放送後、英国の視聴者たちから疑問の声がツイッターなどで挙がっている。多いのは「いくら家族モードが搭載されているとはいえ、ラブドールが子どもに親しみやすいものになるのは問題ではないのか」というものだ。
「ラブドール自体を否定はしないが、家族の誰もが使える状態でラブドールが存在するというのは普通じゃない」
という意見も見られた。
「This Morning」内でも心理学者が登場し、サマンサについて「健全な状態ではない」と指摘している。
「サマンサは本物の女性ではなく、女性との関係を技術によってシミュレーションしているものに過ぎません。本来、人間と接することで培われるコミュニケーション能力などを機械によるシミュレーションに置き換えることはできないのです。子どもの健全な発達を考えるのであれば、人間と接するべきでしょう」