【美と若さの新常識】(NHKBSプレミアム)2017年9月6日放送
秘策あり! 美しき髪の秘密!
「切れ毛」「抜け毛」「薄毛」「細毛」、そして「うねり」でまとまらない......。女性の髪の悩みは尽きないが、それは、日頃の間違った手入れが原因になっているかもしれない。最近、美髪研究が急速に進み、従来のケアの仕方とは違う正しい対策が明らかになってきた。
中でも恐ろしいのが20代の女性でも起こる、髪内部のダメージ「空洞化」だ。それを防いで美しい髪にするにはどうしたらよいか。毛髪の研究者、超一流の美容師、モデルたちがプロのテクニックを惜しみなく伝授する。
20代女子の多くが間違ったケアで髪が「空洞化」
番組では冒頭、恐ろしい映像を見せた。女性の髪の毛の超拡大写真だ。髪の毛の中央に白い線が走っている。チクワのように中が空洞化してスカスカになった髪だ。髪の毛の中の様子を見ることができる機器を使って、街頭の女性の髪の毛をチェックすると、30~40代の女性はもちろん、20代の女性でもかなり多くの人の髪の毛が空洞化していた。
空洞化はなぜ起こるのか。髪の毛の構造は3つの層に分かれており、一番外側に髪を守る「キューティクル」と呼ばれる組織がある。キューティクルは、うろこ状の細胞がぎっしりと敷き詰められているが、間違ったシャンプーのやり方や髪の乾かし方を続けているうちにダメージを受け、表面がはがれ落ちる。すると、そのすき間から中の成分が流れ出し、芯の部分が空洞化するのだ。
空洞化が進むと髪のハリやコシが失われ、切れ毛が増え、ツヤも失われる。美しい髪になるために、よかれと思ってやっているケアが、仇(あだ)となるわけだ。髪の悩みを研究している順天堂大学先任准教授の植木理恵さんはこう説明する。
植木准教授「空洞化は治すことができません。髪の毛自体は、ケラチンというたんぱく質の一種で、1回傷んでしまうと修復できないのです。ただ、ケアをしっかり行ない、根元からキレイな髪を作れば、いずれ髪の毛全体が回復します。空洞化は、意識して触ってみるとわかります。ハリコシがなくなったり、うねりが出やすくなったりすると、空洞化が進んでいます」
プロは地肌を乾かし、素人は毛先を乾かす
では、空洞化が起こらないようにするには、どんなシャンプーの仕方、乾かし方がよいのか。2017年6月、日本武道館で2万人を集めてヘアショーが行われた。番組スタッフが楽屋を訪ね、会場で優れた技量を披露したトップクラスの美容師たちにケアの秘訣を聞いた。
桜井章生さん「プロの美容師は髪の根元をドライヤーでしっかり乾かしますが、お客さんは毛先を乾かす人が多い。だから、毛先が傷んでしまう。根元を乾かせば毛先を自然に乾くので毛先にドライヤーを当てる必要はありません」
SAKURAさん「濡れたまま寝るのが一番傷みやすい。例えば後頭部がすごく傷んでいる人がいます。たぶん見えていないのでしょう。自分では乾かしているつもりでも、意外と乾かし漏れがあるものなのです」
そして、美容師たちが髪を傷ませない洗い方の大切なポイントとして強調したのが「予洗い(よあらい)」だ。シャンプーをつける前に、お湯で髪と地肌をまんべんなく洗う。予洗いが、なぜ髪を傷めない洗い方につながるのか。花王ヘアケア研究所研究員の後藤朱美さんがこう説明した。
後藤さん「予洗いをすると、シャンプーが簡単に泡立ちます。シャンプーの洗浄成分はマイナスの電荷を持っていて、濡れた髪と地肌もマイナスの電荷を持っています。両者が反発し合うため、泡にくるまれた汚れや皮脂が髪を強くこすらなくても落ちやすくなるのです」
指ですくように軟らかく洗うのがコツだ。また、すすぎをよく行うことも大切。すすぎは洗った倍くらいの時間をかけてするという意識で、しっかり地肌にお湯をあててすすぐとよい。
ここまでは初級編だが、ここから先は上級編。女性誌の表紙を飾ることが多い人気モデルの宮本りえさんが、髪のケア方法を披露した。実は、モデルは撮影やショーによって髪型をがらりと変えるため、髪にとっては過酷な職業なのだ。しかし、宮本さんをチェックしても、空洞化の兆候がまったくない美しい髪だ。自宅で宮本さんが始めたのは、なんと入浴前のケア。クッション性のあるブラシを取り出し、頭皮マッサージ。
宮本さん「ブラシでペコペコやり、髪の毛を少しずつ逆なでます。固まった頭皮を柔らかくし、血行をよくしたあとは、髪についたホコリや汚れを落としていきます」
次に行ったのは髪の保湿。宮本さんが使ったのは特製の油だ。「アンズ油大さじ2、レモン汁大さじ1」を混ぜたものを頭皮と髪の毛全体に塗っていく。これには番組ゲストの女優たちから「ええ~、これからシャンプーするというのに、なぜその前に髪に油をつけるの?」と驚きの声が上がった。
入浴前に油のケアをすると、保湿力がかなり違うという。一度塗れば3日ほど指通りがいい状態が続く。そして入浴後は、イノシシの毛で作られたブラシで丹念に髪をすいた。これを使うと髪がサラサラになるという。宮本さんのケアのやり方について植木准教授がこう絶賛した。
植木准教授「すばらしい! すべてはマネできませんが、簡単に取り入れられるのは、シャンプー前にブラッシングで髪のからまりを取り、汚れを浮かせることですね。また、汚れは油にくっついて落ちますから、シャンプー前に特製の油をつけるのは理にかなった方法といえます」
昔のシャンプーのCMシーンを真似してはダメ
スタジオでは、ゲストの専門家たちにさらに美髪になるための方法を聞いた。Q&Aでまとめると――。
Q:昔のシャンプーのCMでもよく見た、ゴシゴシと手をすり合わせて髪を洗う動作は髪によくないのでしょうか?
A:「今では禁止シーンです。髪の毛は乾いている時は硬いですが、水に濡れると非常に柔らかくなり、キューティクルがどんどんはがれてしまいます。シャンプーの時は髪ではなく、頭皮を洗うと思ってください。髪の毛は指を最後に通すぐらいの感覚でいいと思います」
Q:自分に合ったシャンプーは、どうやって選べばいいのですか?
A:「それを判断するのは、シャンプー後のすすぎの時が一番いいです。髪の毛がひっかかったり、髪の毛がぎゅっと固まったりする場合には、よりコンディショニング成分が入った、しっとりしたものを使うといいと思います」
Q:髪を洗うタイミングは夜と朝のいつがいいですか?
A:「朝早めに起きて、洗ってしっかり乾かして出かけるほうがよいです」
Q:くせ毛やうねりがある髪の毛はどう乾かすといいですか?
A:「クセがある人が一番意識するべきことは生えを整えること。まず、ドライヤーで地肌の生えグセをとります。地肌を乾かしながら指でとかしていくと、だんだんツヤが出てきてきれいに乾いていきます。根元を乾かしている間に、毛先は余熱でどんどん乾いていきます」