プロは地肌を乾かし、素人は毛先を乾かす
では、空洞化が起こらないようにするには、どんなシャンプーの仕方、乾かし方がよいのか。2017年6月、日本武道館で2万人を集めてヘアショーが行われた。番組スタッフが楽屋を訪ね、会場で優れた技量を披露したトップクラスの美容師たちにケアの秘訣を聞いた。
桜井章生さん「プロの美容師は髪の根元をドライヤーでしっかり乾かしますが、お客さんは毛先を乾かす人が多い。だから、毛先が傷んでしまう。根元を乾かせば毛先を自然に乾くので毛先にドライヤーを当てる必要はありません」
SAKURAさん「濡れたまま寝るのが一番傷みやすい。例えば後頭部がすごく傷んでいる人がいます。たぶん見えていないのでしょう。自分では乾かしているつもりでも、意外と乾かし漏れがあるものなのです」
そして、美容師たちが髪を傷ませない洗い方の大切なポイントとして強調したのが「予洗い(よあらい)」だ。シャンプーをつける前に、お湯で髪と地肌をまんべんなく洗う。予洗いが、なぜ髪を傷めない洗い方につながるのか。花王ヘアケア研究所研究員の後藤朱美さんがこう説明した。
後藤さん「予洗いをすると、シャンプーが簡単に泡立ちます。シャンプーの洗浄成分はマイナスの電荷を持っていて、濡れた髪と地肌もマイナスの電荷を持っています。両者が反発し合うため、泡にくるまれた汚れや皮脂が髪を強くこすらなくても落ちやすくなるのです」
指ですくように軟らかく洗うのがコツだ。また、すすぎをよく行うことも大切。すすぎは洗った倍くらいの時間をかけてするという意識で、しっかり地肌にお湯をあててすすぐとよい。
ここまでは初級編だが、ここから先は上級編。女性誌の表紙を飾ることが多い人気モデルの宮本りえさんが、髪のケア方法を披露した。実は、モデルは撮影やショーによって髪型をがらりと変えるため、髪にとっては過酷な職業なのだ。しかし、宮本さんをチェックしても、空洞化の兆候がまったくない美しい髪だ。自宅で宮本さんが始めたのは、なんと入浴前のケア。クッション性のあるブラシを取り出し、頭皮マッサージ。
宮本さん「ブラシでペコペコやり、髪の毛を少しずつ逆なでます。固まった頭皮を柔らかくし、血行をよくしたあとは、髪についたホコリや汚れを落としていきます」
次に行ったのは髪の保湿。宮本さんが使ったのは特製の油だ。「アンズ油大さじ2、レモン汁大さじ1」を混ぜたものを頭皮と髪の毛全体に塗っていく。これには番組ゲストの女優たちから「ええ~、これからシャンプーするというのに、なぜその前に髪に油をつけるの?」と驚きの声が上がった。
入浴前に油のケアをすると、保湿力がかなり違うという。一度塗れば3日ほど指通りがいい状態が続く。そして入浴後は、イノシシの毛で作られたブラシで丹念に髪をすいた。これを使うと髪がサラサラになるという。宮本さんのケアのやり方について植木准教授がこう絶賛した。
植木准教授「すばらしい! すべてはマネできませんが、簡単に取り入れられるのは、シャンプー前にブラッシングで髪のからまりを取り、汚れを浮かせることですね。また、汚れは油にくっついて落ちますから、シャンプー前に特製の油をつけるのは理にかなった方法といえます」