悲しみや怒り、失望を感じたとき、多くの人は「いつまでもこんな風に考えてはいられない」とネガティブな感情を否定して前に進もうとするのではないだろうか。
一見前向きな対応法にも思えるが、実はネガティブな感情でも否定することなくありのままに受け入れる人のほうが心的ストレスの度合いが低く、精神的な健康状態も良いとする研究結果が、カリフォルニア大学バークレー校やトロント大学の研究者らによって2017年7月13日に発表されている。
3つの実験から導き出された結果は
自分の感情や思考に対してどのような判断を下すか、どのように向き合うのかは個人差が大きい。それが悲しみや怒りのようなネガティブな感情であれば、綺麗に流し去ってしまうほうが辛さも軽減されるように思える。
実際にネガティブな感情を覚えたときにはどのような判断を下すのが理想的なのか。カリフォルニア大学バークレー校の研究者らは3つの研究を組み合わせ、ネガティブな感情との向き合い方と精神的健康状態の変化の関係を探った。
1つ目の実験は1003人の被験者を対象に、「自分がネガティブな感情を覚えたとき、『そんな風に感じるべきではない』と自分自身に言い聞かせる」という意見に賛同するかどうかをアンケートで調査。さらにマインドフルネス測定によって、被験者らの健康度や幸福度を測定するというもの。
その結果、前述の意見に同意しなかった人は同意する人に比べ身体や精神の健康度が高く、人生における幸福度も高い傾向にあることがわかった。
1つ目の実験結果を受けて設計された2つ目の実験は、ストレスの感じ方を調査するためのものだ。コミュニケーションスキルや保有する資格を評価する模擬面接という名目で審査員を前にして3分間のスピーチを行い、その後どのような感情を抱いていたか、どの程度ストレスを感じていたか、156人を対象に調査している。
すると、ネガティブな感情を否定的に捉える人は受け入れる人に比べストレスを強く感じていたことが確認された。
さらに長期間の影響を探るために実施した3つ目の研究では222人を対象に、2週間の課題を行ってもらい、その間に並行して自身の感情や精神状態も記録。6か月後には精神的健康状態を調査し、精神状態との関係を分析している。
ここまでの2つの研究の結果から想像できるかもしれないが、ネガティブな感情を否定するような記録をつけていた人はそうでない人に比べ軽度の気分障害であると診断されることが多かった。