福岡県朝倉市では、5年前の2012年にも今回と同じく政府の激甚災害指定を受けた水害が発生していた。当時も家屋の浸水や河川への被害が出たが、取材に答えた地元住民は一様に「今回の方が圧倒的にひどい」と話した。
歴史を紐解くと、300年前にも豪雨災害が起きているこの地域。河川の改修、流木への対策をはじめ、「次」に備える準備を整えなければならない。
家に入り込んだ水があわや2階に
朝倉市は2006年、旧甘木市、旧朝倉町、旧杷木町が合併して誕生した。総面積は246.71平方キロと福岡県で4番目に大きい自治体となる。総面積の約55%を森林が占める。記者が甘木から杷木へ車で移動した日は天候に恵まれたが、一般道で30分程度を要した。山道に入ると、復旧作業中の場所も多い。
2017年7月5日の九州北部豪雨で赤谷川が氾濫し、大量の土砂や流木で家屋が大きな被害を受けた杷木林田地区を9月3日に訪れた。残暑が厳しいなか、ボランティアの人々が複数の家の中で清掃作業をしていた。既に泥のかき出しが終わっていた家もあるが、住める状態とは言えない。
自宅が被害を受けた男性(62)は、「何とか家を直して、戻って来たい」と話す。大雨の日は2階で難を逃れた。だが家に入り込んできた大量の水は、あわや1階と2階を結ぶ階段の上部まで達しそうだった。その泥の跡は、記者が訪問した時点でも壁にクッキリ残っていた。5年前の大雨の際、この家は床上まで水に浸かったが、今回は「けた外れ」の猛威だった。
この男性の家の近所では、高齢の女性が一時的に戻って来ていた。今はアパートに住むが、それまで長期にわたる避難所暮らしで足の痛みがつらかったという。5年前の豪雨では多くの家財道具が使えなくなった。徐々に新しく買い揃え、元の生活を取り戻したところに今回の集中豪雨が襲いかかった。「またここに戻ってくるのは、無理かもしれない」と悲しそうな表情を浮かべた。
少し離れた白木谷川の近くでは、男性が自宅の片付けをしていた。聞くと、ボランティアがまだ誰も来ていないのだという。暑さのなか、手助けなしの作業は相当厳しいに違いない。