寝たきりの赤ちゃんに「むくみ」がない不思議
ところで、リンパの流れを良くする方法はほかにもある。「赤ちゃんの呼吸法」から学べるという。赤ちゃんは運動もせず、いつも横になっているのに、なぜむくまないのか。信州大学特任教授の大橋俊夫さんが注目したのは、赤ちゃんが「腹式呼吸」をしていることだった。そこで、大橋教授は横になっただけの状態と、横になり腹式呼吸をしている状態を30分続けてもらい、ひざ下5センチの箇所の足の太さを計測する実験を行なった。すると、寝ているだけでは0.5ミリ短くなっただけだが、腹式呼吸をすると、4.75ミリも短くなった。腹式呼吸をするとリンパ液の流れがよくなり、ひざ下のむくみが解消されてが細くなったのだ。
大橋教授「横になって腹式呼吸をすれば、手足のマッサージ以上にリンパ液が流れます。実はお腹の奥には、『乳び槽』(にゅうびそう)という、全身のリンパ液の約8割が通る場所があります。リンパのネットワークの中で、巨大なターミナル駅のような役割を果たす大事な場所です。乳び槽は風船のように伸縮し、リンパ液がたまると膨らみます。そこで腹式呼吸をすると、体重の重みに横隔膜の動きが加わり、乳び槽に圧力がかかり、たまったリンパ液が一気に流れるのです。赤ちゃんがむくまない理由は、腹式呼吸をして乳び槽を刺激しているからです」
乳び槽は足のリンパ管に直結しているため、腹式呼吸で7、8時間寝ている間に、きれいにむくみは解消されるという。ところで、リンパをよくする腹式呼吸は寝ていないとだめなのだろうか。
大橋教授「起きている状態でも効果はあります。腹式呼吸はどこでもできるので、仕事中や電車の中など、気付いたときに行なってリンパの流れを良くするといいでしょう」