【すくすく子育て】(Eテレ)2017年9月2日放送
「ダブルケアの悩み」
育児と介護を同時進行する「ダブルケア」。晩婚化や晩産化で出産年齢が高くなっていたり、介護する側の兄弟姉妹が少なかったりいなかったりで、ダブルケアに直面するパパ・ママが増えている。
どうしてもイライラが募り、子供に我慢させすぎかな...などと頭を抱えることも。番組では、恵泉女学園大学の大日向雅美学長と、一般社団法人ダブルケアサポートの植木美子理事を迎え、ダブルケアの悩みに答えた。
介護を受ける側も「チームの一員」ととらえる
静岡県の和智智子さんは、仕事をしながら一人息子の将真(しょうま)くん(1歳10か月)を育て、同居している、足が不自由な義母の律子さん(84)の介護をしている。さらに、兄と同居している実父の石川美嗣(みつぐ)さん(84)が前年に体調を崩し、家事が思うようにできないので、週1、2回は様子を見に行っている。
和智さん「子供に『待って、待って』と言う回数がすごく増えた。お義母さんも、子供に手がかかる分我慢してくれていることがたくさんあると思う」
仕事も家事も育児も介護も...の日々で、時間が足りないと感じる。イライラして夫や将真くんに言い方がきつくなる時もあり、自己嫌悪に陥っている。
大日向氏「まず自分の育児と介護に自信を持ってほしい。十分できていないとか、罪悪感で『すまない』と思うかもしれないが、介護を受ける側は『ごめんなさい』『すまない』と言われすぎると辛くなる。一人で全部抱え込まず、パパや周囲の人と一緒にやって合格点くらいに思って」
美嗣さんはまだ自分で動けることもあり、介護サービスの利用を勧めても渋るという。
植木氏「介護は4人のチームでやるとまかり通ると言われたことがある。和智さんと、例えばケアマネージャーや地域の知り合い、そしてお父様自身もチームの一員として、『是非自分を助けるためにデイサービスに行ってもらえない?』などと話して。一緒にチームとして介護をしたら負担が減ると思う」
「ママが求めているのはヘルプだけでなくシェア」
「どこをどう助けていいのか、言われないとわからない」とこぼす、和智さんの夫にも大日向氏から助言が。
大日向氏「ママが求めているのはヘルプだけでなくシェア。遠慮もあるけど、目一杯の時は自分で整理できなくなっているから、やってほしいことも言えない。ママの1日の流れを書き出して、『これは僕がするよ、お母さんのケアはやってくれる?』など、分かち合いの時間を持ちましょう」
愛知県の奥山香那子さんも、夫が朝早くに家を出て帰りは遅い時間なので、話を聞いてもらえる時間がなく、義母の介護を全て任されているという。
大日向氏「介護が必要なのは夫の親でしょう?『私もちゃんとやるけど、あなたもあなたの兄弟もその配偶者も、みんなで分かち合おう。そうでないと公開しますよ。私がつぶれたらうちの家庭もどうなるか』とはっきりと叫びましょう。それでも聞いてくれなかったらプチ家出くらいしていいんじゃない?現状を知らせなきゃ」
介護は子供の自尊心を育むチャンス
奥山さんは、翔太くん(3歳9か月)、雄斗くん(1歳6か月)の育児と、介護の仕事、家事に加え、週末は義母の米子さん(82)の身の回りの世話をしに病院へ通っている。子供の遊びを中断しなければならない時もあり、不機嫌な翔太くんをなだめながら雄斗くんをおんぶして病院へ行く。
病室では踊ったり車いすに座ったりと、じっとしていられない翔太くん。ついつい叱ってばかりになる。
遊びに行く予定を立てていても、病院から「来てほしい」と連絡があると、すぐに予定を中断して行かなければならない。
奥山さん「何か嫌なことがあっても、隅でぐっとこらえながら泣いていると保育園から聞く。精神的にも、他の子たちより我慢させたり負担させたりが多いのかな」
大日向氏「介護はマイナスばかりではない。翔太くんくらいになると、人の役に立つ喜びが持てる。『おばあちゃん、翔ちゃんが来てくれて喜んだね』『優しいね翔ちゃん』『遊びを我慢してえらいね』『ありがとう』など、精一杯ほめてあげてほしい。テーマパークや公園に行くだけが子供にとって嬉しいことではない。家族の役に立っている自尊心を育んであげるチャンスでもある」
植木氏「ママが罪悪感を抱えていると笑顔が少なくなる。病院に行く時にちょっと楽しみを見つけて。例えば『帰りに一緒にラーメン食べに行こう』とか、自分も楽しいことをする。ママが楽しければ子供はもっと楽しい。笑顔になれるような楽しみを子供と一緒にできたらいい」