ひところ話題を呼んだ週刊誌の「死ぬまでSEX」特集だが、最近、これにちょっとした変化が起きている。
「家族にバレないための無料エロ動画『安心安全』ガイド」(週刊現代、2017年9月23日・30日号)
「もっと知りたい!世界中のエロ動画をタダで観られる『奇跡の検索サイト』AVgle」(週刊ポスト、9月22日号)
これらは、11日発売(首都圏など)の現代・ポスト最新号の見出しだ。そう、最近の週刊誌で人気なのは、高齢者を主にターゲットとした「アダルトサイト入門」講座なのである。
「PCの音量をチェックすることも忘れてはいけない」
たとえば、海外のアダルト動画サイト「AVgle」だ。2月に開設されたばかりの新興サイトにも関わらず、現代とポストはそろって大きく取り上げている。ポストにいたっては、9月15日号、22日号と2週連続で紙幅を割いているほどだ。
高齢の読者に配慮してか、その解説は非常に懇切丁寧で、
「AVgleに正しくアクセスするには、まず検索サイト『Google』で『AVgle』と検索しよう。『Google』にいきなり『巨乳 動画』など、見たい動画の単語を入れてしまうと、全く違うサイトが表示されてしまうことがあるので要注意だ。目的の動画に辿り着いたら、再生前にPCの音量をチェックすることも忘れてはいけない」(現代、9月23日・30日号より)
などと、実にわかりやすい。なお、同じページには他のアダルトサイトも紹介されているが、大手として知られる「XVIDEOS」の説明は、「言わずと知れた知名度No.1の海外無料サイト」。読者にとってはもはや常識ということか。
「懐かし」の作品の紹介も多い。ポストの6月23日号では、過激な性愛描写が話題を呼んだ故・大島渚監督「愛のコリーダ」(1976年)をはじめ、「白日夢」(81年)、「エマニエル夫人」(74年)などなど、「青い体験」(73年)といった40~50年前の名作を並べ、「この動画は、海外発の無料エロ動画サイト・XVIDEOSに存在する」。小林ひとみさんや豊丸さん、桜樹ルイさんなど、80年~90年代に活躍したAV女優たちも、こうしたアダルトサイト特集の目玉として見出しに名を連ねる(ポスト、7月21日・28日号)。
「家族バレ」対策も万全だ
高齢読者のITリテラシーに配慮して、各種のトラブル対策にも抜かりがない。現代の9月23日・30日号では、
「視聴履歴はこうやって消す」
「予測変換機能でエロワードが勝手に出てくるときの対処法」
など、実用的な対策を付録の小冊子という形で伝授している。「家族バレ」のみならず、ワンクリック詐欺やスパム広告対策へのアドバイスも充実だ。ほかの号の特集では、「メルカリ」や「Tinder(ティンダー)」など、最新アプリの「エロ」方面への活用法も紹介されている。これを全部読んでいれば、下手な若者よりもよほどネットに詳しくなれそうだ。
現代、ポスト両誌を中心とした、週刊誌の「死ぬまでSEX」路線は、2013年ごろから注目を集めてきた。これらはタイトルの通り、読者の「実践」を促すものだったが、上記のように「ネット」へのシフトが最近は目立つ。
「死ぬまで...」と言っても、相手がいなくては
高齢者の性とネットの関係について、ITジャーナリストの井上トシユキ氏に聞いた。
「昔から高齢者も、こうした動画を観てはいたのです。2005年ごろ、地方を訪れた際に、ネットカフェに高齢者が並び、アダルト動画を観ていたのを見かけたことがあります。当時、特に地方では、家の中で動画を観ることが難しかったので、このような場所に集まっていたわけですね」
しかし、スマートフォンやノートパソコンの普及もあり、自宅で動画を観ることも難しくなくなった。
「そして、『死ぬまでSEX』とはいえ、奥さんがなかなか応じてくれない場合、どうしても『一人』で、ということになります。とはいえ最近の女優さんは知らないし、『激しい』内容はついていけない。すると、懐かしの女優さんの動画、ということになるわけです」
また、こんな見方もできるという。
「高齢になると、奥さんに比べどうしてもご主人の方が、家族での居場所がなくなりがちです。アダルトサイトの人気は、そうした男の『孤独』を象徴していると、もしかしたら言えるかもしれません」