窓枠や柱(ピラー)のない樹脂製のフロントウインドーを搭載した世界初の市販車が今2017年秋にも日本にお目見えしそうだ。帝人が新素材を開発し、京都市の電気自動車(EV)開発ベンチャー「GLM」が、EVスポーツカー「トミーカイラZZ」の特別仕様車として市販する。これまでのガラス窓は強度が低く、窓枠やピラーのないフロントウインドーは実現できなかった。樹脂製は強度が高く、開放感あふれるフロントウインドーがスポーツカーを中心に普及するか注目される。
帝人が新素材「ポリカーボネート(PC)樹脂」製のフロントウインドーを開発し、世界で初めて市販車に搭載することになる。自動車のフロントウインドーは高い視認性や衝突安全性、優れた耐候性などが求められるため、これまではガラス窓が使われてきた。
保安基準が改正
国土交通省が定めた自動車の保安基準では、これまでPC樹脂を使うことができなかったが、2017年7月から保安基準が改正され、自動車のフロントウインドーは、より高い耐磨耗性を満たせばPC樹脂が認められることになった。
PC樹脂はガラス窓の代替品として注目されているものの、ガラスに比べて「耐磨耗性が低く、窓の開閉やワイパーなどにより、表面が傷つきやすいという課題があった」(帝人)という。紫外線で黄色に変色しやすいなどの問題もあったが、帝人は産業機械メーカーとコーティング技術を共同開発し、日本の保安基準だけでなく、欧米の耐磨耗性の基準を満たすことに成功した。
通常、自動車のフロントウインドーはガラスを支え、衝突時に乗員を守るピラー(Aピラー)が存在する。安全性を高めるにはAピラーを太くする傾向にあったが、前方の視界を妨げるデメリットがあった。今回、帝人は「通常ならAピラーがあるフロントウインドーの周辺部に厚みを持たせることにより、世界で初めてAピラーレスの自動車を実現した」という。