北朝鮮の相次ぐミサイル発射で、航空便にも異変が起きている。日本を欧州に向けて出発する便は、離陸後に日本海を北上してシベリアに入るコースが一般的だが、2017年8月からは、さらに東寄りの東北地区を北上するルートに変更する動きが相次いでいる。
飛行機の通過後「10分も経たないうちにミサイルが落下した」と指摘されたことを受け、「極力日本海を通らない」ルートに迂回する動きが加速している。
AF293便「奥尻島の北西を通過後、10分も経たないうちにミサイルが落下した」
日本から欧州に向かう航空機は、仮に首都圏の空港を出発した場合、群馬県や新潟県上空を経て佐渡島の北端をかすめながら日本海を北上し、ロシアの沿海地方上空を経由してシベリアに入るルートが一般的だった。これが変化するきっかけになったのが、7月28日深夜の北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」型の発射だ。「火星14」は45分間ほど飛行し、奥尻島の北西約150キロメートルの日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられている。米ABCテレビは、同日深夜に羽田空港からパリに向けて出発したエールフランス航空のAF293便が
「奥尻島の北西を通過後、10分も経たないうちにミサイルが落下した」
と指摘。エールフランスは8月2日、当該便が
「飛行計画に沿って運航され、事故が報告されていないことを確認している」
との声明を発表し、安全面に問題がなかったことを強調した。その上で、
「当局と協力して、エールフランスは常に潜在的に危険な空域を分析し、飛行計画に適切に反映させている」
とも説明した。直後の8月3日からAF293便は違うルートを飛ぶようになった。離陸後、本州を北上して下北半島上空を通過し、さらに利尻島や礼文島を経て間宮海峡付近からロシアに入るルートだ。成田や関西空港を発着するエールフランス便も、数日後には同様のルートを飛ぶようになり、8月中旬までにイベリア航空(スペイン)、ルフトハンザ航空(ドイツ)、スイス国際航空(スイス)、スカンジナビア航空(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー)が追随した。
スイス国際航空の広報担当者は
「ルフトハンザグループの航空会社(スイス、ルフトハンザ、ルフトハンザ・カーゴ)は、日本発着便で1年以上前から北朝鮮の空域を避けて(迂回して)きた」
と説明し、17年8月からは
「北朝鮮当局による最近のミサイル試験のため、純粋な予防措置として、別途通知があるまでの間は日本発着便のルートを若干修正している」
とした。スカンジナビア航空の日本支社も、ルートが
「極力日本海を通らないよう、北海道上空を通過」
するように変更されたとしている。