2016年8月に公開され大ヒットとなった「君の名は。」の新海誠監督(44)が2017年9月7日、国立新美術館(東京都港区)で、11月から開催される展覧会「新海誠展『ほしのこえ』から『君の名は。』まで」を記念したイベントに登場した。
「君の名は。」公開から1年経った今の心境や、展覧会の魅力などについて話した。
「僕じゃなくても出ていたような、不思議な感覚」
今回の展示会は新海監督のデビュー15周年を記念したもの。2002年のデビュー作「ほしのこえ」のほか、「君の名は。」「秒速5センチメートル」や「言の葉の庭」など6作品の絵コンテやポスターなど約1000点が展示される。国立新美術館で、11月11日から12月18日まで開催される。現役アニメーション監督の名を冠した展覧会が開かれるのは今回が初めて。
新海監督は展覧会について、
「大変光栄に思うが、同時になんだか居心地の悪い気もする」と話した。その理由について、
「アニメーションは100人、200人が携わる集団制作。展示物の多くは僕が描いたものもあるが、多くのものはスタッフが描いてくれた、共同制作の結果なんです。そういうものを『新海誠展』と1つの名前でやっていただくことに対して申し訳なさや居心地の悪さを感じる」と控えめに話し、作品制作に携わった周囲への感謝を忘れなかった。
また、デビュー作「ほしのこえ」については、
「15年作品を作る中で自分自身を変えられてしまうような大きな作品は、最初の『ほしのこえ』でした。僕が作らなくても、誰かがあのタイミングで、あの作り方で出していたような気がする。ちょうど時代の転換点でアニメーションがデジタルで作られるようになって、人々のコミュニケーションがメールというものが日常に入り込んだタイミングでたまたま僕がテーマとして作った。僕じゃなくても『ほしのこえ』のような作品が出たんじゃないかと思えるような作品です」
とこれまた控えめに話した。
「君の名は。」についても、
「1年経った今でも、『君の名は。』は他の誰かが作れたんじゃないかと思う。作る役割が自分にあり、たまたまスタッフがいた」と話し、その理由についても、
「自分で作りたいと思った作品だが、なんとなく作る役割が自分にあり、たまたますばらしいスタッフがいて、あの作品が作らされた気持ちがある。たまたま自分がいたから。監督が僕じゃなくても僕が作らなくても出ていたような不思議と思えるような作品です」
と振り返った。
何度か繰り返した「不思議な感覚」を持った理由について、
「自分でも時間が経たないとわからないが、もしかしたら時代にリンクするようなものが2016の夏にあったかもしれない。今回の展覧会を自身で見ることで、『どうしてあの時僕はこういう映画を作ったんだろう』ということを展覧会を通して発見できるかもしれない。その意味で楽しみにしています」
と語った。