「キリンはビールを不味くしている」「だからアサヒに勝てないんだ」。そんな批判がネット上に広がった。
かつては販売量で圧倒的首位を独走したキリンビールだが、1990年代になってアサヒビールに抜かれ万年2位に甘んじている。首位を奪還すべく活動する営業マンのドキュメンタリーがテレビ放送されたのだが、そのシーンの中に、居酒屋内でビールを目の前に先輩からパワハラ紛いの叱責を受け、涙を流す一人の社員の姿があったため、「ビールのイメージが悪くなった」というのだ。
「お前、どれだけやっとんねん。やれや!できるやろ!!」
キリンビールが批判を受けているのは2017年9月5日放送の経済ドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」(テレビ東京系)。副題は「なぜ勝てない?万年2位・・・キリンの苦悩」だった。番組では関西のビールシェアはアサヒビールの「スーパードライ」が44%と圧倒的で、キリンの「一番搾り」は15%と紹介し、キリンは全社を挙げて関西での販売拡大に邁進していると紹介した。スーパーマーケット担当の営業マンが集まった17年8月21日の近畿統括本部会議室での会議の様子を撮影し、一人の男性担当者に「2倍売るにはどうするんだ!」などと迫るシーンもあった。この迫られた担当者が今回の「主役」で、会議の終わった夜、「本当の会議が始まる」というナレーションとともに「主役」を含む営業担当者数人が居酒屋に入って行く。
営業マンたちが入った居酒屋の座敷には「秋味」といった、キリンのビール系商品のポスターが何枚も張られていた。それぞれの目の前にはキリンのものだろうと思われるビールのジョッキが置かれ、それを飲んでいるうちに、先輩のパワハラまがいの説教が始まる。
エリート街道を歩んでいるという「主役」に対し、
「お前、今のまま上に上がられたら下の子が付いてこないでしょ。俺できない、知らない、やだ、そんな奴にリーダーやってほしくない。お前、どれだけやっとんねん。やってないねん。やれや!できるやろ!!」
などと強い口調で迫った。そしてその「主役」は居酒屋の座敷で涙を流し、その涙は流れ続けた。
「麒麟一番搾りだろ、部下を搾ってどうすんだよ」
番組の意図としては、情熱を持った若手社員たちがビールのシェアを伸ばそうと熱い議論を戦わせ、感動の涙を流す、そんなシーンが欲しかったのかもしれないが、これによってキリンに対する激しい反発が起きることになってしまった。とにかく「ビールが不味くなる」というもので、
「こんな飲み会してるからキリンはアサヒに勝てんのや」
「麒麟一番搾りだろ、部下を搾ってどうすんだよ」
「ビール会社がビールを不味くするとか、本末転倒過ぎて そりゃ勝てませんわって感じですわw」
「飲み会は楽しい場ではありません、と見せつけたらいかんでしょ」
などといったことがツイッターや掲示板に書き込まれ、キリンだけでなくビール自体がこういうシーンを見せられると気持ち悪く感じてしまう、と大騒ぎになった。
キリンは今回の事態をどう判断しているのか。J-CASTニュースが9月7日に同社広報に話を聞いたところ、この番組を見たという人たちから「お客様センター」へ様々な意見が寄せられているということを明かした。今後の対応について同社広報は、
「日々いろんな意見を頂いておりますが、今回についても弊社の今後の取り組みの参考にさせて頂きたいと思っております」
ということだった。