猫は他の猫の尿のニオイを嗅ぐと「遠慮」する
そこで、猫の尿のどの成分が「他の猫が近くにいる」と警戒させるニオイなのかを調べ、尿から猫特有の硫黄臭を含むニオイ物質を取り出した。この尿抽出物を野外に置き、通りかかった野良猫に実験すると、みなニオイを丹念に嗅いだ後、糞尿をしないままその場を立ち去った。また、一度ニオイを嗅いだ野良猫は、同じ日や数日後、同じ場所に現れたが、その場所に糞尿をすることはなかった。つまり、この尿抽出物があると、すぐ近くに他の猫がいると勘違いし、糞尿をすることを「遠慮」する効果があるわけだ。
研究チームの宮崎雅雄准教授は発表資料の中でこう語っている。
「現在、ネコの嫌がるニオイによる忌避剤や超音波撃退装置などが多数販売されています。しかし、効果には個体差があり、数回使うと猫が慣れてしまい、十分な効果が得られない問題がありました。私たちの研究成果は、猫の行動原理に基づいており、猫に他の猫がいると勘違いさせ糞尿をしないまま立ち去らせる効果が期待できます。人と野良猫の共存を考慮した画期的な糞尿被害防止策を提案できると考えます。今後は、尿抽出物の濃度や作用持続時間などを検証し、商品化を目指します」