猫ブームとは裏腹に、放し飼い猫や野良猫による糞尿被害が社会問題になっている。多くの「猫被害防止グッズ」が売られているが、十分な効果は上がっていない。
岩手大学の研究チームは、猫が他の猫の尿のニオイを嗅ぐと自分の尿を残さずに立ち去ることを発見、動物行動学専門誌「Applied Animal Behaviour Science」(電子版)の2017年8月5日号に発表した。この猫の性質を利用すると、画期的な猫の糞尿被害防止剤が開発でき、人と野良猫の共存が期待できるという。
水噴射・超音波・LED光線など多くの撃退グッズが...
「猫被害」をグーグルで検索すると、949万件がヒットすることからわかるように、猫の糞尿に悩む人は非常に多い。現在、通販やホームセンターなどでは次のような様々なタイプの猫対策グッズが売られている。
(1)赤外線で猫を探知、猫の大嫌いな水を噴射して撃退。
(2)赤外線で猫を探知、超音波とLEDフラッシュ光線を発して追い払う。
(3)釘状の鋭いトゲが密集したシートを庭や塀の上に置く。
(4)先端が包丁の刃のようにキレる柵を花壇の周りに並べる。
(5)猫が嫌うとされる天然炭の粉末を撒く。
(6)木酢液(もくさくえき=炭を作る時に出る蒸留液)など猫が嫌うとされる植物由来成分を撒く。
しかし、猫は学習する動物で非常に賢い。嫌なニオイでも自分に危害がないとわかったり、危険物の避け方を学んだりするとまた侵入してくる。
岩手大学の発表資料によると、研究チームは猫の縄張り行動を観察調査している際、猫は他の猫の尿のニオイを嗅ぎつけると、強い興味を示すが、そのまま立ち去ることを発見した。犬の場合は他の犬の尿のニオイの上に自分の尿をふりかける。これは「オーバーマーキング」(他の動物のマーキングに自分のニオイを被せる行為)と呼ばれ、多くの哺乳動物に見られる行動だ。しかし、猫はそのニオイを丹念に嗅ぐと、「ブレーメン」と呼ばれる、口を半開きにしてポカーンとした表情になるだけで、その場を去ってしまう。これは、猫は近くにニオイの主の他の猫がいると勘違いして立ち去る習性があると考えられるという。