中国の大型漁船が「根こそぎ獲っていく」 サンマめぐる苦い現実

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   庶民の秋の食卓と言えばサンマ。だが、近年、漁獲量が減り、値上がりが続く。北太平洋の漁業資源を管理する国際会議では、乱獲を防ぐための漁獲枠の設定に失敗した。果たして、今までのように食べ続けることができるのか?

   東京都中央卸売市場のサンマの卸売価格(年平均)の推移をみると、2006年は1キロ332円だったのが2016年には564円へと1.7倍になっている。1年のサイクルを見ると、7月の初物までは解凍ものなので、概ね300~400円台で推移し、8月に700円以上に上がり、9、10月となだらかに下がり、11月以降はまた低位に戻る。この全体の水準が、年々切り上がってきていて、2016年8月は約900円になった。2017年7月は2016年よりやや安い442円で、今年の8月は前年よりは安いとしても、それでも高水準になりそうだ。

  • 秋の味覚であるサンマを食べ続けることはできるのか
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日本は規制案を提案したが...

   高値の主因は漁獲量の落ち込みだ。2000年以降を見ると、日本のサンマの漁獲量は08年の約35万がピークで、少ない年でも20万トン水準は維持していたが、13年に約15万トンに落ち込み、14年は20万トン超に盛り返したものの、15年は11万2264トン、16年はさらに2.4%減って10万9585トンにまで下がっている。

   水産庁によると、かつてはサンマ漁の大半を日本が占めたが、2000年ごろから台湾が漁獲量を伸ばし、13年に初めて日本を超えた。中国は12年に公海での漁に参入し、漁獲量を急増させている。16年は日本11万トン、台湾も前年より減らし15万トン、中国6トンとなっている。

   そんなサンマに関して国際的な漁獲枠を検討する舞台が北太平洋漁業委員会(NPFC、事務局・東京)で、日本、カナダ、ロシア、中国、韓国、米国、台湾、バヌアツの計8か国・地域が参加している。2015年9月に第1回の委員会を開き、北太平洋の公海でのサンマの実態調査を17年までに行って資源量を評価し、資源量を維持できる新たな保存管理措置の議論を始めることで合意していた。

   これに沿ってこの7月、NPFCの会合が札幌で開かれ、日本は規制案を提案した。北太平洋の年間漁獲上限を56万4000トンとし、主要国では、日本24万2000トン、台湾19万1000トン、中国4万7000トン、ロシア6万1000トン、韓国1万9000トンなどを割り当てるとした。

   水産庁によると、台湾と、もともと少ない米国、カナダは日本案を支持したが、近年漁獲量を増やしている中国は、資源が減少しているとの認識を共有することさえ拒否。韓国、ロシアは時期尚早と指摘した。

日本にも「弱み」

   一方、NPFCは加盟各国に、登録した漁船以外の操業は認めておらず、今回、各国が操業を許可するサンマ漁船の増加に歯止めをかける措置では合意した。

   中国でのサンマ需要の増大が今の事態を招いている。日本の食文化の浸透の結果という、日本には皮肉な事態でもある。台湾の漁獲量の急増も、中国への輸出のためだ。

   漁法の問題もある。中国の大型漁船による漁が、東北~関東沖に南下してくる前の北太平洋で、資源をさらっていくのだ。日本のサンマ漁船は、せいぜい100トン程度だが、中国は1000トン級の大型船が三陸沖などの公海に進出し、「根こそぎ獲っていく」(水産関係者)という。

   日本は2018年のNPFC会合で、改めて漁獲枠の設定を提案する構えだが、中国には登録外の違法操業の漁船も多いとされ、これを含めて、中国が規制を受け入れるよう仕向けるのは容易でない。

   ただ、日本にも「弱み」がある。クロマグロの規制に関して、国内沿岸でクロマグロの未成魚(30キロ未満)について、承認のない漁業者が獲ったり、獲った分を報告しなかったりする違反が2016年から相次ぎ、全体の年間漁獲枠(2016年7月~17年6月)をオーバーするという失態を演じたのだ。

   「こうした違反がクロマグロ以外の資源保護に影響する」(日経7月26日社説)だけに、「他国に資源管理の強化を求めるためにも、まずは漁業大国である日本自身が範を示す必要がある」(朝日8月16日社説)のは、いうまでもない。

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