現金5000円を払うと1万円分の買い物ができる独自の「仮想通貨」が、日本一高いビル「あべのハルカス」(大阪市)内の近鉄百貨店で2017年9月1日から期間限定で導入されている。
消費者は差し引き5000円分お得になる計算だが、何を狙っているのか。
あべのハルカスの200店舗で利用可能
近鉄グループホールディングス(GHD、本社・大阪市)が実験的に導入する「近鉄ハルカスコイン」(単位:コイン)は、事前に抽選で選ばれた5000人に対し、現金5000円で1万コイン(1コインは1円相当)が発行される。システムの構築には、民間シンクタンクの三菱総合研究所(本社・東京都千代田区)が協力している。
同コインが利用できるのは近鉄百貨店あべのハルカス近鉄本店内の約200店舗に加え、ビル内の展望台と美術館の入場料にもなる。200店舗は地下の食料品売り場からアパレル店、雑貨店、家具店など幅広い。決済には専用のスマートフォンアプリを使用し、商品購入時に店舗端末に表示されるQRコードを読み取るだけの操作で行える。実験のため、利用できるのは10月1日まで。
インターネット掲示板では同コインについて「5000円で1万円の商品券買うお得」「マジかよ」「凄いな」など、レートのお得感に驚きが広がっている。
他社や自治体との連携も視野に入れた構想
サービスを展開する近鉄GHDの広報担当者は4日、J-CASTニュースの取材に、「実験です」と答えた。
何の実験かというと、同社は独自の「仮想通貨プラットフォーム」を考えており、その確立によって近鉄沿線を活性化しようとの構想を持っているという。今回はその第一段階で、
「技術的に決済がスムーズに行えるか、お客様の利便性向上につながるか、課題を抽出するための試験導入になります」
と話す。
消費者5000人に5000円ずつ、合計2500万円を無償提供することになるが、そのあたりのリターンはどう考えているのか。「利点や改善点のデータが抽出できれば、十分です」としている。
担当者によると、仮想通貨が導入されれば消費者はさまざまな店舗・施設でスマホ1つで簡便に支払いができる。同社としては「どこで、どういう層のお客様が、どういう商品を購入しているかといった情報も把握でき、その後の事業展開に役立てられます」と情報面のメリットもあるとする。
将来的には、デパートでの買い物だけでなく、沿線の近鉄グループによる様々な事業の強化につながるのを見込んでいる。さらに、プラットフォームが確立すれば自治体や他企業にも提供したい考えももっている。
一方、インターネット上では「電子マネーとの違いがわからん」との指摘もある。この点、担当者は「仮想通貨では、電子マネーが備える決済機能に加えて、個人間での手軽な送金、さらに円や他の仮想通貨と交換できる機能もあり、機能の幅が広いです」としていた。ただ、今回はあくまで「第一歩」の実験としているため決済機能だけが利用でき、それ以外の機能は将来の本格実装での導入を検討している。