北朝鮮は2017年9月3日午後、大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水素爆弾の実験に「完全成功」したと発表した。これに先立つ同日午前に、労働新聞をはじめとする国営メディアが、金正恩委員長が水爆を視察したと報じたばかりだった。
この労働新聞の記事で見逃せないのが、「EMP(電磁パルス)攻撃」が出来ると主張している点だ。EMP攻撃は、高高度での核爆発で発生するパルス状の電磁気で電子機器を無力化させるというもので、影響範囲も広い。これまでも北朝鮮によるEMP攻撃のリスクは指摘されてきたが、北朝鮮が自らEMP攻撃の能力があると主張するのは初めてだ。韓国では「事実上、石器時代に戻る」という指摘も出ている。
ソウル上空100キロで爆発すれば南方170キロまで影響受ける
9月3日朝に公開された国営メディアの記事では、開発したとされる水爆について
「巨大な殺傷・破壊力を発揮するばかりでなく、戦略的目的によって高高度で爆発させて広大な地域に対する超強力EMP攻撃まで加えられる」
と説明。熱線や爆風といった直接的な殺傷力以外に、EMP攻撃で社会インフラを広範囲に破壊できることを主張した。
韓国の公共放送、KBSは9月3日夜のニュースで、EMP攻撃を受けた際は
「自動車などの交通手段や金融機関や病院、通信施設など、すべての基幹施設が停止したり、誤作動を起こしたりして、事実上石器時代に戻る」
という専門家の声を紹介。
「ソウル上空100キロメートルで100キロトン級の核爆弾が爆発すれば、南方向に向かって最大約170キロメートルまでEMP攻撃の被害を受ける」
とも解説した。ソウルから釜山までの直線距離は約320キロ。この「ソウル方向から南に向かって170キロ」という範囲は、韓国の半分以上に影響が及ぶことを意味する。米国でも、核ミサイルが400キロ上空で爆発すれば、米国全域が影響を受けるという。その上で、
「EMPの前では、軍の先端兵器も無用の長物で、韓国ではごく一部の軍の施設を除いては、EMP防護施設がなく、北朝鮮のEMP攻撃には、お手上げな状況」
などと嘆いた。