欧州10か国の多民族、米国の多人種調査で同じ結果
今回、「AIM」誌に掲載された論文の1つ、南カリフォルニア大学の研究では、対象者を主に「非白人」に絞っている。45~75歳のアフリカ系米国人(黒人)、米国先住民、ハワイ先住民、ラテン系米国人、日系米国人ら計18万5855人が対象だ。コーヒーの摂取量を中心に、食事や生活習慣、病気歴などを詳細にアンケート調査し、平均で約16年間追跡した。
その結果、コーヒーを1日1杯飲む人は、コーヒーを飲まなかった人に比べ、総死亡率(病気や自殺などで早死にする率)が12%低くなった。さらに、1日2~4杯飲む人では18%低くなった。特に心臓病、呼吸器疾患、脳卒中、糖尿病、腎臓病、がんになるリスクが大きく下がった。これは、従来の白人を中心にした研究結果と同じ内容だ。コーヒーが及ぼす健康効果は人種・民族を問わなかったわけだ。この傾向はカフェインあり、カフェインなし(デカフェ)のコーヒーともに同様だった。
同誌に載ったもう1つの論文が、英王立ロンドン大学と世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関「IARC」との共同研究によるもの。英、仏、伊、デンマークなど欧州10か国の多民族・多人種52万1330人を対象にした。コーヒーの摂取と健康効果の関連を調べた研究では過去最大規模だ。
その結果、1日に3杯コーヒーを飲む男性の総死亡率は、飲まない男性に比べ12%減(女性では7%減)だった。病気別では、特に消化器疾患と循環器疾患のリスク減効果が高く、男性では消化器疾患が59%減、女性では循環器疾患が28%減だった。ただし、卵巣がんのリスクだけは、1日3杯飲む女性は飲まない女性より7%高くなった。
2つの研究とも「酒を飲む量が少なく、コーヒーを飲む量が多い人ほど長生きする傾向がある」という点では共通している。欧州10か国の研究では、各国で飲み方の文化が異なるため、カフェインの有無は調べていない。「IARC」のマーク・グンター博士は論文要旨の中でこう述べている。
「重要なことは、コーヒーを飲む文化や伝統が多様な欧州10か国すべてで、コーヒーを毎日飲むことで健康を得られるという同じ結果を出たことだ。これはコーヒーに含まれる成分に余命を延ばす効果があることを示している」