原発の本格議論を避け、石炭火力規制で環境配慮をアピール
これに対し、原発維持・推進の3紙のうち、日経(10日)は「重要なのは30年時点の目標を達成するだけではない。その先をにらみ、エネルギーを安定的に使い続ける長期の視点を欠いてはならない」と、長期的視点が重要との立場から、「基幹電源として使い続けるならどこかで新増設を考えなければならない。30年以降を意識した議論を今から始めるべきではないか」と主張。産経(28日)も「中期的に原発比率を2割台とする現行計画を維持し、着実に推進することが肝要だ」としつつ、「将来の電源確保をにらみ、原発の新増設を明確に盛り込むことも欠かせない」と訴える。新増設の議論を避けようとする政府に対し、原発推進の立場から、新増設を堂々と取り上げて論じるよう、厳しく注文をつけた形だ。
これに対し、同じ原発推進でも、読売(26日)は石炭火力を中心に論じ、他紙との違いを見せた。その趣旨は「『脱石炭』の世界的な流れに沿い、日本も石炭火力への過度な依存を避けるため、知恵を絞ることが求められる」というもので、石炭火力に厳しい態度をとってきた環境省に、経産省も歩調を合わせてきていることを評価している。原発には最後に、「エネルギー安全保障上、原発の利用は欠かせない。(略)原発を基幹電源として活用するなら、再稼働への取り組みを強化すべきだ」と、簡単に触れただけ。原発の本格議論を避け、石炭火力規制で環境配慮をアピールしたいのが安倍晋三政権の本音とみられるだけに、政権への読売の「忖度度」の高さを際立たせた形だ。