いま、当たり前のようになっているエスカレーターでの歩行をめぐって、「歩いていいのか?ダメなのか?」などと、ツイッター上でちょっとした議論が巻き起こっている。
2017年7月にあったエスカレーター事故を巡って投稿されたツイートがきっかけ。エスカレーターのメーカーによる業界団体は、「エスカレーターは歩くことを前提に作っていない。歩くのは危険」と呼びかけているのだという。
「最初っから一人幅のエスカレータだけ設置しとけば」「『歩く』ことが風習」
2017年8月19日、標識などを取り扱う石井マーク(大阪府大阪市)の公式ツイッターはエスカレーターでの歩行について、次のようにツイートした。
「①歩く事を前提に設計していない ②業界団体・施設が禁止事項としている この2点こそが「設備を使用する条件」として重要」
8月28日時点で、7000超のリツイート、4000超の「いいね」がついている。
同社の担当者によると7月10日に起きた高松市での車いすでのエスカレーター事故を受けてツイートを行ったといい、Togetterにまとめられるなどして話題になった。
同社はエスカレーター製造には直接関係していないが、「安全」や「標識」といったテーマでツイッターを更新しており、今回もそのテーマに基づくツイートという。
これを受けて、ツイッターでは、「エスカレータは歩かないものだと思ってる」といった意見のほか、「歩いてほしくないなら最初っから一人幅のエスカレータだけ設置しとけば」と、設計に問題があると見る声があった。
歩いても壊れないが、歩くとケガのリスクがある
J-CASTニュース編集部は8月21日、昇降機メーカーが所属する業界団体である、日本エレベーター協会の担当者に取材したところ、「製造会社は、エスカレーターで人が歩くことを想定していません」と明言。
同協会によれば、エスカレーターのステップ1枚に65kgの人が2人乗っても問題なく運行できるようになっているという。
では、歩くとエスカレーターは壊れるのか。製造会社である日立ビルシステムの広報担当者に取材したところ、
「歩くことだけでエスカレーターが壊れたりすることは基本的にないと考えております」
と述べた。今までのメンテナンスでは、エスカレーター上の歩いている側のステップや内部構造が著しく摩耗していることはなかったという。
ただ、改めて「エスカレーター上を歩くことは想定していない」と同社担当者は念押しをしており、エスカレーターを歩くことのリスクは歩行に伴う接触や転倒によるものだとした。
日本エレベーター協会の機関紙である「ELEVATOR JOURNAL」によると、エスカレーターでの事故件数が1475件あり、そのうち手すりを持たずに転倒する、歩行によりつまずいて転倒するなどの「乗り方不良」による事故は882件となっており、全体の約60%となっている(13年1月~14年12月)。
エスカレーター上を歩くことにそこまで危険が伴うのであれば、明確に禁止することを打ち出すべきではないか、という話になる。JR東日本などの鉄道各社では、「エスカレーター『みんなで手すりにつかまろう』キャンペーン」(17年7月21日から8月31日に実施)があるものの、明確に禁止はしていない。このキャンペーンは今年で5年目になる。
この点について25日に取材したところ、JR東日本の広報部担当者は、
「どのようにしてエスカレーター上を歩かないよう訴えられるのか、様々に検討してまいります」
と述べている。