無月経や骨粗しょう症、心臓機能に「致死的結果」...
日本摂食障害協会はウェブサイトで、「スポーツにおける摂食障害」「アスリート向けガイド」という資料を公開している。英国版を和訳したもので日本は多少事情が違うかもしれないが、競技者だけでなく指導者にとっても参考になりそうだ。それぞれ見てみた。
摂食障害のリスクが高いスポーツとして挙げられたのが水泳、ランニング競技、体操、ダイビング、シンクロナイズドスイミング、レスリング、柔道、軽量級ボート競技だ。有病率は男性より女性が高いが、男性でもなり得る。
アスリートの食習慣は一般の人のそれとは違うかもしれないが、パフォーマンス強化が目的で、食事と体重に細かく注意が払われている。だがこの範囲を外れてむやみに食を制限したり、自分で吐こうとしたり、下剤や利尿剤、浣腸、精神刺激剤を使ったりと「有害になり得る体重コントロールの手段」に走ると、摂食障害を本格的に発症する恐れが高まる。
拒食症では、アスリートの場合は「もしも普通に食べたら、そのスポーツで同じレベルで競技できないかもしれない」と恐れることがある。極端に高い目標を立て、過度に練習し、体重と体型をコントロールしようとする。体重が減り、トレーニング量は増えるのでパフォーマンスは落ちる。すると選手本人は自己嫌悪からますます練習をエスカレートさせる。その結果、女性の場合は月経ストップや骨粗しょう症といった症状が現れるという。
過食症の場合、本人は自分の外見に決して満足しない。厳しすぎるダイエットを自ら課し、クリアできないと自己嫌悪に陥って「むちゃ食べ」に走る。スポーツのパフォーマンスと結びついた不安もやはり、むちゃな食べ方を引き起こすことがあるという。こうした行為は、自分をコントロールできていないとさらなる嫌悪感を呼ぶ。ダイエットのルールすら守れないのにスポーツで頂点に立つことなどできないと考え、また困難なダイエットに取り組んで何日も断食したり、無理に食べたものを吐きだしたりするようになる。「むちゃ食いと排出行動のサイクル」が始まるのだ。ずっと繰り返すと、「血清カリウムのレベルの低下をひきおこすことがあります。これは、最終的には、心臓の機能に、致死的な結果を招くこともあり得ます」。
資料では、「摂食障害は精神科領域の重大な病気であり、他のどの精神科領域の病気よりも多くの命を奪っています」として、悩んでいる場合は早く支援を求めるよう呼びかけている。早いほど、治療により全快する可能性が高まるからだ。選手の身近にいるコーチも、ある種のトレーニングが摂食障害を起こすリスクを高めることを知っておく必要があり、選手の問題に気づいたら適切にサポートするよう促している。