米投資会社サーベラスが、保有する西武ホールディングス(HD)株をすべて売却した。売却したのは2017年8月10日で、16日に西武HDが発表した。西武グループ再建を資金面でサポートしたサーベラスは一時、西武HD株の保有比率を35%超に高めて経営陣と対峙したが、上場後は徐々に売却し、多額の売却益を得た。西武HD設立から11年半。サーベラスとともに歩んできたその歴史は、大きな節目を迎えた。
投資ファンドを活用した再生
サーベラスが西武グループと資本提携で合意したのは2005年秋。グループの中核である西武鉄道で2004年春、総会屋への利益供与事件が発覚し、同年秋には有価証券報告書の虚偽記載が明らかになって、同年12月に上場廃止になった。不祥事によって生じた経営不安を払拭するため、メインバンクのみずほコーポレート銀行から送り込まれた後藤高志・西武鉄道社長(のち西武HD社長)らが考案したのが、サーベラス、日興プリンシパルといった投資ファンドを活用した再生プランだった。
西武HDは2006年2月、サーベラスから約1000億円の出資を受けて設立。サーベラスは約3割を握る筆頭株主になった。後藤氏が掲げたのは「峻別と集中」。プリンスホテルやスキー場、ゴルフ場などで赤字を垂れ流していたものは次々と売却、休止。一方で収益の拡大が見込める施設は思い切った改装やブランディングを実施した。こうした施策が奏功し、有利子負債の大幅な削減を目標より早く実現した。
順調に業績を拡大する西武HDは2012年に再上場への準備を本格化させるが、売却価格などをめぐってサーベラスと対立。2013年に入ると、サーベラスは経営陣の交代を要求したり、TOB(株式公開買い付け)を実施して持ち株比率を35%超に高めたりするなど、ますますエスカレートした。西武鉄道の不採算路線やプロ野球・西武ライオンズの保有をめぐっても対立があったとされる。