2016年米大統領選で共和党のドナルド・トランプ氏を支持した人は、民主党のヒラリー・クリントン氏の支持者に比べ、平均余命が短い地域の住民が多いことが米ボストン大学公衆衛生学部のジェイコブ・ボル教授らの研究で明らかになった。
この研究は米公衆衛生学会機関誌「American Journal of Public Health」(電子版)の2017年8月14日号に発表された。
米国で広がる「平均余命」格差が投票パターンに
同誌のプレスリリースによると、ボル教授らは大統領選の投票パターンを全米の郡単位ごとに、1980~2014年の平均余命の変化との関係から分析した。この期間に米国民全体の平均余命は5年以上延びた。しかし郡別に見ると、10年以上延びた地域がある一方で、全く変化がない地域や、逆に短くなった地域もあり、地域間で健康格差の拡大が指摘されている。
その結果、同期間の平均余命の延長年数が全国平均を下回るほとんどの郡では、有権者の過半数がトランプ氏に投票していた。一方、全国平均を上回るほとんどの郡では有権者の過半数がクリントン氏に投票していた。具体的には、民主党のオバマ氏と共和党のマケイン氏が戦った2008年大統領選と比べ、2016年大統領選では、トランプ氏は平均余命の延長年数が全国平均を上回る郡では6万7000票を減らした一方、全国平均を下回る郡では310万票増やした。これに対し、ヒラリー氏は全国平均を上回る郡で140万票増やし、下回る郡で500万票減らした。
ボル教授らによると、米国には人種、都市部や農村部などの地域、階層別に48の集団がある。1999~2015年の間に米国全体の成人の早期死亡率(病気や事故で早死にする割合)は約8%下がったが、逆に増加した複数の集団がある。そのすべてが大都市圏外の農村部に住む非ヒスパニック系白人の集団だ。死亡率が増加した原因は、失業、喫煙率の高さ、自殺、薬物中毒、肝臓病などの慢性疾患、そして医療ケアを受けられない貧困状態だ。
ボル教授は論文の中でこうコメントしている。
「社会的経済的に恵まれない白人集団の絶望と、早すぎる死への怒りがトランプ氏への票につながった可能性がある。質の高い保健医療に誰でもアクセスできるシステムが全米に広がるべきだ」