昔のカレンダーを貼りっぱなしは要注意
それにしても、こんな状態になるまでなぜ片付けないのか。東邦大学看護学部の岸恵美子教授が、信子さんの精神状態をこう説明した。
岸教授「嫌なこと(片づけること)を後回しにするという症状は、『セルフネグレクト』(自己放棄)だと考えられます。セルフネグレクトとは、人が生きるうえで最低限必要な行為(食べる・入浴する・清掃するなど)をしない、あるいはできないことです。セルフネグレクトの人の7割は部屋が散らかっているという調査があります。また、孤独死する人の8割がセルフネグレクトという報告があります」
セルフネグレクトになるきっかけには次のような理由があるという。
(1)転職やリストラ、引っ越しなど環境の変化。
(2)多忙。
(3)失恋や人間関係のトラブル。
(4)病気、ケガ、配偶者など親しい人の死亡。
「セルフネグレクト予備軍」は自己チェックできる。次の4つのうち当てはまる数が多いほど要注意だ。
(1)昔のカレンダーが貼りっぱなし。
(2)いつか捨てようと思いながら、ついゴミをためてしまう。
(3)冷蔵庫に賞味期限切れの物が複数ある。
(4)トラブルを相談せずに、いつも自分で解決しようとする。
ここで、番組アシスタントのタレント、春香クリスティーンさんが素っ頓狂な声を上げた。
クリスティーンさん「私、全部あてはまります! 今も玄関にゴミ袋がおいてあるし、まだ、去年のカレンダー使っています!」
クリスティーンさんはかつて、「部屋は散らかり放題で、バッグにゴミを詰めて、ホテルや放送局のゴミ箱に捨てている」とか「トイレの床はヒンヤリして気持ちがいいので、頬をつけて寝ています」などという「汚部屋エピソード」をテレビで披露して話題になった人だ。
MCの三宅裕司「もう8月だよ。今年のカレンダー出しなさいよ。何か、悩むことでもあったわけ?」
クリスティーンさん「スイスから越してきて、慣れるまで大変でした」
高齢者の場合は認知症のケースを心配する必要がある。市ヶ谷ひもろぎクリニック精神科診療部長の本郷誠司医師が、こんなクイズを出した。
本郷医師「認知症の人が片づけられない理由は次のうちどれでしょうか。『どこから片づけていいかわからない』『部屋が散らかっていても気にならない』『部屋を片付けたくても、片づける意欲がわかない』。正解は『部屋が散らかっていても気にならない』です」
認知症の人は、部屋が散らかっていること自体理解できないため、片づける気にならないのだ。認知症の人の家を片づけるコツは、まず玄関をスッキリさせること。玄関を物がふさいでいると、外に出る気が起こらず、気持ちが内側にこもる。まず心を外に向けさせることが大切だからだ。