2017年4~6月期の国内総生産(GDP、季節調整値)の1次速報は、物価変動の影響を除いた実質で前期比1.0%増、これが1年間続いた場合の年率換算した実質成長率が4.0%増と、2015年1~3月期の4.8%以来の高成長になった。内閣府が8月14日に発表した。プラス成長が6四半期続くのは、2005年1~3月期から2006年4~6月期以来、11年ぶり。これまで成長の主役だった輸出がマイナスに転じたが、国内の個人消費や設備投資が伸びた。ただし、天候や公共投資で内需が押し上げられた形で、新聞の論調も辛口が目立つ。
内需関連がそろって拡大
実質GDP成長率(前期比1.0%)への寄与度を内外需の別でみると、内需がプラス1.3%に対し、外需はマイナス0.3%だった。
内訳は、個人消費が前期比0.9%増(前期は0.4%増)、設備投資が2.4%増(同0.9%増)、公共投資は5.1%増(同0.6%増)と、内需関連がそろって拡大。一方、輸出が0.5%減と4四半期ぶりのマイナス、輸入は1.4%増と前期(1.3%増)から拡大した結果、輸出から輸入を差し引いた外需は6四半期ぶりにマイナスになった。
「経済最優先」で、急低下した内閣支持率の回復を図る安倍晋三政権には願ってもない追い風というところだが、今後も勢いが持続するかには疑問の声もある。大手紙のうち社説(産経は「主張」)で取り上げた4紙も、先行きに慎重な見方が多い。
日経(8月16日)が「4%成長は追い風参考記録だ」との見出しを掲げたように、一時的な要因による高成長との見方で一致。具体的に、「個人消費は、08年のリーマン・ショック後の景気対策を受けて購入された自動車や家電の買い替えが進んだ。天候に恵まれ、旅行やレジャー、外食も好調だった」(読売18日)と、そろって分析。日経は「底堅い株価を材料に消費者心理が上向いた」ことも指摘している。
もちろん、大事なのはこれからだ。いまが出来過ぎということで、「この夏の天候不順でレジャーなどの消費が再び停滞し、7~9月期の成長率は落ち込むとの予測もある」(毎日17日)という懸念も、概ね共通する。
そこで、「この流れを一過性に終わらせてはなるまい」(産経17日)というわけだが、なにが大事か、という点では、各紙、微妙にスタンスに違いが出る。
読売・産経は賃金上昇優先
経済の総合力を示すGDPに関する論調とあって、あれも、これもと総花的に課題を並べる傾向は否めないが、特に、賃金上昇の重要性を強調するのが読売と産経で、「賃金増が小幅なことが、消費が力強さを欠き、消費者物価の上昇率も0%台を低迷する要因の一つだ。各企業は、内部留保を膨張させず、従業員に積極的に振り向けてもらいたい。それが、経済の好循環を実現する道である」(読売)、「企業収益が改善した割に賃上げは力不足だ。......人手不足に対応するにはIT(情報技術)などを活用して、労働生産性を高める必要がある。効率化の成果を、社員の所得向上に確実につなげることが肝要である」(産経)と指摘する。これは、安倍政権が、官製春闘などで賃上げを主導し、働き方改革や生産性向上を掲げる流れに即した論調と言え、安倍政権、アベノミクス支持という両紙の基本スタンスを反映したと言えそうだ。
これに対し、毎日は「アベノミクス開始から4年半以上が経過した。改革には十分な時間だが、政府は目先の対策を優先した」として、特に消費税率引き上げの延期を俎上に載せ、「高齢化社会を支える安定財源が確保されなければ社会保障に対する国民の不安は解消されず、節約志向も変わらない」と、4紙の中で一番批判的だ。
なお、読売は、規制緩和など様々な課題を列挙する中で、「企業や個人の『貯蓄志向』を転換させるには、将来不安を取り除く努力が大切だ。......持続可能な社会保障制度の構築には、収入の多い高齢者の負担増なども避けられまい」と指摘しているが、先述の通り、全体としてアベノミクス支持のトーンだ。
日経は、「大事なのは......中長期の成長基盤をしっかり固めることだ。......政府は労働市場や規制緩和などの構造改革の手を緩めてはならない」と、「持論」の構造改革の必要に言及するにとどまっている。