北大、日本のハツカネズミのルーツを解明 4000~2000年前に大陸から渡来

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   人家に住み着く「家ネズミ」と呼ばれるネズミは、ドブネズミやクマネズミのほかに「ハツカネズミ」がいる。人が定住を始めたときにはすでにハツカネズミも住み着いていたとされ、ハツカネズミのルーツを探ることは人類がどのように移動していたかを紐解くうえで、重要な情報になるという。

   北海道大学大学院・地球環境科学研究院の鈴木仁教授らの研究チームは、日本に生息する野生のハツカネズミが中国や朝鮮半島から渡来したことをDNA解析によって確認したと、2017年8月14日発表した。

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中国南部と朝鮮半島から2度移入

   従来はハツカネズミが人間に家に住み着くようになったのは農耕が確立されて以降とされてきた。しかし、仏国立自然史博物館の研究によって農耕確立前の1万5000年前には、すでに人間が採集した種や穀物を目当てにハツカネズミが人の近くにいたことが確認されている。犬の家畜化よりも前だ。

   今では世界中にハツカネズミが生息しているが、これは食糧の供給減となる人間の移動に合わせてハツカネズミも生息域を広げていったため。つまり、各地のハツカネズミのルーツを探れば、その地域に住む人間のルーツや移動ルートもわかる可能性があるのだ。

   鈴木教授らによると、現在日本に生息するハツカネズミは遺伝子解析によって、「南アジア亜種」と「北ユーラシア亜種」の大きく2系統に分かれていることはわかっていたが、具体的にいつごろどの地域から日本列島に移入したかは不明だった。

   そこで、国内で収集されたハツカネズミ80匹のDNAを分析し、その進化の速度とDNA配列が組み変わった時期を解析。それぞれの解析結果を組み合わせ「いつどのような集団と交雑したのか」を導くことで、ハツカネズミのルーツを探った。

   その結果、日本列島には約4500~3300年前の縄文時代後期に中国の南部から、約2000年前の弥生時代初期に朝鮮半島から、2回のハツカネズミの移入があったことがわかったという。

   現在では中国南部系統はほぼ駆逐されてしまっているが、北海道や東北地方では比較的近年(約1000年前)に中国南部系統と朝鮮半島系統の交雑が起き、現在に至っているようだ。

はるかに前には南アジアからも?

   ハツカネズミと人のルーツが一致するのであれば、日本人の祖先も同じルーツである可能性はあるだろう。ハツカネズミは稲を食べるため、鈴木教授らは2回目の移入は稲作文化の移入と関係があるのではないかとも推測している。

   さらに、今回の解析から中国南部と朝鮮半島には存在しない南アジア由来のDNAの断片も確認された。縄文後期よりも前に南アジアのどこからかハツカネズミが移入していたことを示すもので、鈴木教授らも「日本人の起源を考える上で大変興味深い結果」としている。

   ちなみにDNA解析では欧米系の断片も確認されているが、これは数十年前程度の近年の移入によるもので、現代の国境を超えた人間活動の結果、遠く離れた欧米からハツカネズミも移入してきた可能性があるようだ。

   鈴木教授らはハツカネズミのルーツが日本人の起源を考える上で有用な知見を与えてくれる可能性があるとし、ユーラシア大陸での詳細な調査を行いたいとしている。

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