文大統領が一転、徴用工問題は「解決済み」 本当に「賠償蒸し返し」やめるのか

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   元徴用工への補償問題をめぐって文在寅(ムン・ジェイン)大統領が従来の政府見解を覆した問題で、文氏が2017年8月25日に行った安倍晋三首相との電話会談で「日韓基本条約で解決済み」だとの立場を表明した。

   元徴用工の個人の請求権が残っているとする前言を覆したともとれる発言だが、韓国メディアの中には、今回の発言が「記者会見での答弁と軌を一に」していると報じる社もある。韓国政府による「賠償蒸し返し」は、本当にないのか。

  • 就任後初の記者会見に臨む韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領。(写真は大統領府の動画から)
    就任後初の記者会見に臨む韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領。(写真は大統領府の動画から)
  • 就任後初の記者会見に臨む韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領。(写真は大統領府の動画から)

8月17日の会見では最高裁「追認」

   韓国政府は05年の政府見解で、徴用工の請求権問題は韓国政府が責任を負うべきだとしていた。だが、17年8月17日に文大統領が初めて開いた記者会見でそれが一転した。NHKの記者が

「過去の盧武鉉政権の時、日韓基本条約で解決された問題であり、被害者への補償は、韓国政府が行うという結論を下している」

などと認識をただしたのに対して、文氏は

「両国間での合意(日韓請求権協定)が、一人一人の権利を侵害することはできない。両国間の合意があるにもかかわらず、徴用された強制徴用者個人が三菱などをはじめとする企業に対して有する民事的権利はそのまま残っている、というのが韓国の憲法裁判所や韓国大法院(最高裁)の判例(判断)だ。政府はそのような立場から、過去の歴史問題に取り組んでいる」

と発言。この発言が、文大統領が最高裁の判断を追認したと受け止められ、日本側は「賠償蒸し返し」(読売新聞)と受け取った。

電話会談最後で「日本国民の間に心配が少しある」

 

   そのわずか8日後に、文氏は微妙に軌道修正を図ったようだ。安倍氏と文氏は8月25日、4回目の電話首脳会談を行い、北朝鮮の弾道ミサイル問題では緊密に協力することを確認した。日本の外務省は、徴用工問題をめぐるやり取りについて

「最後に、安倍総理から、日韓の懸案を適切に管理していくことが重要であるとの趣旨を述べつつ、『徴用工』問題についての我が国の立場を述べた」

と発表していたが、さらに詳しい内容が韓国メディアから明らかになった。

   会談の最後、安倍首相が徴用工問題に関する文大統領の発言をめぐり「日本国民の間に心配が少しある」と切り出した。聯合ニュースと国民日報は、会談での両首脳の発言について、ほぼ同内容を報じている。両社の報道では、大統領府関係者の話として、文氏が

「この問題は日韓基本条約と日韓会談で解決され、韓国政府も(元徴用工に)補償した」

と発言した上で、8月17日の記者会見での発言については

「韓国最高裁が、国家間の問題ではなく、被害者と会社との間に残っている個人の請求権まで解決されたものではない旨の判決をした」

と説明。続けて文大統領は

「この問題が両国間の未来志向の関係の発展に障害にならなければよいと思う」

とも述べ、安倍首相は

「状況を適切に管理し、成熟した関係でなければならない」

と応じたという。

会談では最高裁「追認」発言はあったのか

   文大統領の8月17日の会見では、韓国政府が判決を追認することを表明していたが、韓国メディアの報道を見る限り、今回の電話会談で同様の発言は報じられていない。文大統領が発言の方向を修正した可能性もある。

   一方、通信社の「ニューシース」は、

「文大統領は記者会見での答弁と軌を一にしながら『しかし、この問題が両国の未来志向の関係の発展に障害にならないでほしい』という趣旨で答えた」

とする大統領府関係者の説明を報じており、17日の会見から立場に変化はないとの見方だ。

   菅義偉官房長官は8月25日の記者会見で、文大統領の17日の発言を念頭に、

「民間人徴用工の問題を含め、日韓間の財産請求権の問題については、日韓請求権経済協力協定によって完全に、そして最終的に解決済み、というのが我が国の正式な立場」

と従来の立場を繰り返した。

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