SNSインスタグラムの投稿写真から人工知能(AI)が「うつ病」かどうかを診断することに米バーモント大学の研究チームが成功し、コンピューター科学誌「EPJDeta Science」(電子版)の2017年8月7日号に発表した。
しかも、専門の精神科医より高い確率で「診断」したという。SNSへの投稿をきっかけに人工知能に「心」を見透かされる時代がくるのだろうか。
うつ病の人は「自撮り」と「モノトーン」写真が多い
同誌の論文によると、バーモント大学のクリストファー・ダンフォース教授らのチームは、コンピューターの学習プログラムを使って人工知能(AI)が、SNSユーザーが投稿した写真から「うつ傾向」を評価するシステムを開発した。
そして、ウェブサイトを通じ「投稿写真から精神状態を分析する」という実験の趣旨を説明してボランティアを募集、同意した166人を対象者にして、精神疾患の病歴などの提出を求めた。166人のうち71人が過去3年間でうつ病と診断されていた。
ダンフォース教授らはAIに166人がインスタグラムに投稿した合計4万3950枚の写真を分析させた。その結果、70%の確率でうつ病のユーザーを特定することに成功した。過去の研究では、写真や絵から専門医がうつ病と診断するケースの特定率は42%だというから、正確さでは2倍近い成績だ。
ダンフォース教授によると、AIは投稿写真の「色相」(色の調子)、「明度」(明るさ)、「彩度」(鮮やかさ)を基準に評価し、うつ病の人は「高い色相・低い明度・低い彩度」が特徴だ。ほかには次のような特徴も持っているという。
(1)写真の雰囲気を「幸福」「悲しみ」「親しみ」「面白い」の4つのキーワードで評価すると、「悲しみ」の度合いが高く、ほかの3つの要素が低い。
(2)顔の写真ではアップが少なく、引いた写真が多い。また正面を写真が少なく、斜めや横からの写真が多い。
(3)1枚あたりに写りこんでいる顔の数が少なく、自撮り写真が多い(他人と一緒の写真が少ない)。
(4)色では青色(ブルー)と灰色(グレー)が強く、全体に暗く、ぼんやりしている。
(5)写真を加工する際、インスタグラムのフィルターのうちモノトーンにする「Inkwell」を好んで使う。(注:健康な人は暖色系の明るい色味にする「Valencia」を好む)。
などだ。