携帯電話大手の通信料は下がっていくのか。総務省は、通信料の値下げにつなげるべく、端末機の「過剰」値下げを抑える新指針をまとめ、新大臣の野田聖子総務相も、さらなる値下げを事業者に促す姿勢を示している。
「格安スマホ」との競争もあり、大手キャリアの中には「格安プラン」を導入する動きもあるが、プランによっては対象が限定的であるなどして、全体として大きな通信料の値下げにはつながっていない、との指摘も出ている。
2010年から15年で約14%増
野田総務相は、読売新聞の2017年8月22日付朝刊に掲載されたインタビューで、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの携帯電話大手に、通信料のさらなる値下げを促す考えを示した。記事の見出しは「携帯大手『値下げ まだ可能』」(東京最終版)などとうたった。インタビューの中で野田総務相は、格安スマホの浸透などの要因から、通信料値下げの一定の結果は出ているとの見方を示しつつ、「利用者の立場に立った値下げは、まだ可能だ」と、さらなる値下げを促した。
総務省は、スマートフォン端末の「実質0円」など過度な値引きを制限し、その分の余力を通信料の値下げへ回すよう業者らに促す指針を2016年から導入したが、実態は改まらず、17年の1月に、より効果が出るようあらためて新指針を取りまとめた。こうした流れを受け、野田総務相は8月4日、就任後初の閣議後会見で、通信料の値下げについて、「(個々の)ユーザーに見合った料金体系を丁寧に出して頂くのが大切だ」と、事業者らに要望していた。
総務省の「高い通信料」への懸念の背景には、世帯消費に占める通信料の高まりが、他のものの消費などへ悪影響を及ぼしているのではないか、という問題意識だ。
総務省がまとめた最新の「情報通信白書」(2016年版)によると、携帯電話を中心とする「移動電話通信料」(他にPHS、自動車電話の通信料を含む)は、2010年から15年までを見ると、一貫して上昇を続けている。年間平均で、10年には7万9918円だったのが、12年には8万1477円に、そして15年には9万円を突破し、9万1306円となっていた。10年より約14%増えている計算になる。
「格安プラン」も登場したが...
また、世帯消費支出に移動電話通信料が占める割合も上昇を続けている。同白書が掲載している表をもとに割合を計算すると、2010年は2.63%、11年・2.71%、12年・2.74%、13年・2.75%、14年・2.85%、そして15年は3.07%と「3%」台に達した。
また、月額料金での民間調査をみても、通信料の上昇傾向はうかがえる。モバイル専門のマーケティングリサーチ機関「MMD研究所」(東京都港区)の調査によると、2016年2月29日発表分では、大手3キャリアユーザーの月額平均は7433円だったが、17年3月16日発表の数字では7876円と400円以上増えた。また、格安SIMユーザーの数字も、16年の結果で2067円だったのが、17年では2957円と、800円以上増えていた。また、調査の区分けは異なるが、「スマホ」の月額料金として、14年調査では6514円という結果が出ていた(調査対象は、たとえば17年調査では、15歳以上の携帯電話所有の男女971人)。
2017年1月の総務省の新指針の影響もあってか、同年夏にはauとドコモが格安プランを発表した。たとえば、ドコモの一つのプランを見ると、対象のスマホ機種を買うと月額料金がずっと月1500円割り引かれる、などとなっている。
一方、ソフトバンクは8月7日の決算説明会で、両社の「格安プラン」には追従しない考えを示した。孫正義社長は、両社のプランについて、実態として、特段大きな値下げになっていないのではないか、と疑問を呈した。
今回の野田総務相のインタビュー記事はネット版でも配信され、ツイッターでは
「それは賛成。だいぶ選択肢増えたけど、まだキャリアの料金は高い」
と歓迎する声や、
「日本って携帯電話料金のことまで(国・行政が)とやかく注文をつけるような国だっけ?」
と、市場に任せるべき案件だ、という指摘も出ていた。