がん「代替療法」、標準治療より死亡率高い 部位によって最大で5倍の差

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   がんに対する治療効果が確認されている外科手術や放射線療法、化学療法(抗がん剤治療)などの「標準治療」ではなく、標準治療に含まれない「代替療法」をがん治療の主体とした患者は、標準治療を受けたがん患者より死亡率が高い――。

   そんな研究結果が、米エール大学医学大学院の研究者らによって発表された。これまでにも特定の部位や外科手術を受けなかった場合など、限定的な状況での死亡率が比較した研究はあったが、複数のがんに対する標準治療と代替療法の効果を比較したものはなかった。

  • 効果があるからこそ「標準治療」になっている
    効果があるからこそ「標準治療」になっている
  • 効果があるからこそ「標準治療」になっている

前立腺がん以外は高死亡率

   エール大学の研究は「米国立がんデータベース(NCD)」に蓄積された患者データから、米国で一般的な「転移していない乳がん」「前立腺がん」「肺がん」「直腸結腸がん(大腸がん)」の4つのがんにり患した患者データを抽出している。「すい臓がん」などの難治性のがんの場合、治療法に関係なく死亡率が高くなってしまう可能性があるためだ。

   NCDは、認定を受けた米国内の医療機関1500か所以上から集めた信頼性の高いデータが蓄積されており、患者のステージ(がんの進行状況)はもちろん、標準治療を受けたか否かも記録されている。

   そこでまず「標準治療を受けていない」とされていた患者を「代替医療を受けていた患者」と想定。データから、「診断時に転移は確認されていない」「末期がん(ステージ4)ではない」「がんが進行しやすいような他の病気や遺伝的特徴がない」など死亡率に影響を及ぼしそうな条件が均等なものを抽出した。

   さらに、治療を受けるタイミングで効果に差が出ないよう、「(生存の可能性が低く)緩和目的で治療を受けているわけではない」「標準治療を受けた後(治療効果がなかった後)に代替医療を受けているわけではない」といった条件も設定し、これらに一致した代替療法を受けた患者280人と標準医療を受けた患者560人の7年分のデータを比較分析している。

   その結果、4つのがんのうち3つのがんで代替医療を受けた患者の死亡率が標準治療を受けた患者を上回っており、乳がんは5.68倍、肺がんは2.17倍、結腸直腸がんは4.57倍となっていた。唯一前立腺がんについては進行が比較的遅いためか、調査期間中に有意な差は出なかったという。

   また、代替医療を受けていた患者の傾向も分析されており「乳がん患者の女性」「教育レベル・社会経済的地位が高い」「米西部または太平洋岸在住」「平均的な米国人よりも健康(がん以外の既往歴がほとんどない)」「がんの状況はステージ2~3」といった特徴も確認されている。

専門医「代替医療ががん患者を殺す」

   今回の結果について、論文の査読者や海外の医療メディアなどからは「驚くような結果ではない」という声が出ていた。効果が確認されている「標準治療」ではなく、効果が定かではない「代替医療」を受ければ、死亡率が高くなるのは当然というわけだ。

   米国の医療情報サイト「Science-Based Medicine」で、がん専門医のデビッド・ゴルスキー医師は今回の調査について「最初に代替医療を受けていたが、途中で標準治療に切り替えた例なども想定され、完全に実態を示していないかもしれない」と指摘。代替医療を選択することによる死亡率の上昇は、もっと大きい可能性があるとし、

「代替医療ががん患者に悪影響を与えるかはわからないが、少なくとも生存率の改善には寄与せず、がん患者を殺す治療法である」

という強い表現で代替医療を批判している。

   この調査では代替医療の具体的な種類や、どの代替医療の死亡率が最も高かったのかといった点は不明だ。

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