普段の料理に使う塩分を味噌の塩分に置き換えよう
国立がん研究センターの研究は人間の疫学調査だが、広島大学の研究はラット(ネズミ)の実験だ。同大学の発表資料によると、研究グループは、脳卒中を発症しやすく遺伝子操作した高血圧症のラット36匹を次の3つのエサを与えるグループに分けた。
(1)0.3%の食塩を含むエサ(低食塩群)。
(2)味噌から抽出した2.8%の高塩分を含むエサ(味噌群)。
(3)(2)と同じ量の食塩を含むエサ(高食塩群)。
63日間にわたり観察したところ、もともと高血圧症のラットなので低食塩群でも血圧は200mmHgを越えた。高食塩群ではさらに血圧が上昇、早い段階で脳卒中を発症し、歩行不全などの異常があらわれた。しかし、味噌群では高食塩群と同じ量の食塩が含まれているにもかかわらず、血圧は低食塩群とほとんど差がなく、脳卒中による死亡率も低食塩群と変わらなかった。
これ以前の研究で異なる種類のラットで同じ実験しても、食塩を多く含むエサを与えると血圧が上昇するが、味噌由来の塩分を同じ量を与えても血圧が上がらなかった。こうしたことから、味噌には血圧上昇を抑制する何らかの成分があることが裏付けられたという。
この結果について、研究チームの渡邊敦光名誉教授らは発表資料の中でこうコメントしている。
「今回の研究で、味噌で高血圧を改善できる可能性があることが分かりました。大豆を醸造する時に生じる様々な成分の作用が合わさり、血圧を抑制し、血糖値を低下させていると考えられます。今後の研究課題はそれらの成分の探索です。熟成味噌では特にこの効果が高いようです。普段の料理に使う塩分を味噌の塩分に置き換えることが高血圧予防につながります」